夫婦愛を育む 119
和解、一体化、そして世界一

ナビゲーター:橘 幸世

 子供の頃から“ながら族”であることが功を奏して、たまに良い出合いをすることがあります。

 私は一人でパソコンに向かう時、目の前のテレビをオンにしていることがままありますが、先日もそうしていた中、NHK『逆転人生』の再放送が流れてきました。

 それは、製造したウイスキーが3年連続で世界最高賞に輝いたという肥土伊知郎(あくといちろう)さんを取り上げた回でした。
 彼のウイスキーセットに約1億円の値が付いたというのですから、ウイスキーとは全く無縁の私には、理解をはるかに超えた世界です。

 興味があるはずもなく(でも「逆転人生」というテーマ自体にはある)、所々音声だけ聞きながらパソコンで作業をしていましたが、最後の方で、思わず手を止めて画面に目をやりました。
 確執から疎遠となっていた親子が再会したというシーンです。

 肥土さんの実家は日本酒の酒蔵でした。彼の父はウイスキーがブームになった時原酒を仕込みますが、やがてそのブームも去り、肥土さんが実家の事業に関わるようになった頃には、父はウイスキーは諦め本業に力を入れていました。

 一方、息子は父のウイスキーに可能性を感じます。何とかそれを世に出したいと思いますが、父は猛反対。その後会社は倒産します。父のウイスキーを諦めきれない息子は、父の反対を押し切って、原酒を引き取り、活路を見いだそうと奮闘します。その間父とは疎遠となります。

 詳しい所は聞き逃しているので書けませんが、やがてそのウイスキーが世界で認められ経営面でも成功します。
 ある日、肥土さんは父を自分の蒸留所に呼んで事業を見てもらいました。先代から受け継いだ酒蔵をつぶしたことに負い目を感じ傷ついていた父は、感慨深げに「いいものを見せてもらった」と一言。息子の成功に慰められたのでした。親子の間にあった溝が埋まります。

 子供の才能や可能性を親が信じ抜いて、子供を支え続け、成功に至らしめる話は時折聞きますが、親が挫折したものを子供が信じ抜いてやり遂げるというこのストーリーは……私たちの大切な存在に重なるものを感じます。

 なんとすごい親孝行だろう、とじっくり感動する間もなく、その後の展開がさらに驚くべきものでした。
 彼は、父の作ったウイスキーと自分の作ったウイスキーをブレンドして新しいものを作ります。そうして生れたウイスキーが世界最高賞に輝いたのです!

 父子の心が溶け合い、そして父子のウイスキーが溶けて一つとなった。理屈や技術を超えて、その孝に神様は関わらないではいられなかった、と想像するのは私だけでしょうか?


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