コラム・週刊Blessed Life 117
北朝鮮の行方~兄と妹の権力闘争が始まっている?

新海 一朗(コラムニスト)

 北朝鮮の武漢コロナ(新型コロナウイルス)感染については、表立った情報が流れてくることはありません。しかしながら、中国との関係が強い北朝鮮が、武漢コロナを完全にシャットアウトできているとは到底考えられませんから、いくつかの兆候から推測することは可能です。

 北朝鮮は3月、国内向けに4度も弾道ミサイルを発射しています。
 「なぜ、国内向けに?」と疑問を抱かざるを得ませんが、武漢コロナの感染者が激増し、国内における不平不満が高まっているので、引き締めのためにミサイルを発射した、金正恩体制を揺るがすような動きは許さないと警告の意味を込めてミサイル発射を行ったと考えられます。

 朝鮮人民軍で、兵士180人がコロナで死亡したという情報も伝わっています。
 経済難の中、兵士たちの多くは栄養失調のため、コロナに対する免疫力が低いと見られます。ウイルス感染で死亡した人民は、穴を掘ってそのまま埋められているということです。

 このようなコロナ騒ぎの中で、北朝鮮の政治にいくつかの異変が感じられ、何かただならぬ気配があると見る専門家たちがいます。

 それは、金正恩の妹、金与正が後継者として急浮上してきているという見方です。
 現在の北朝鮮では、「金正恩(兄)+金与正(妹)」の体制で、健康問題を抱える兄を支える妹の存在感が強まっているわけですが、この兄妹体制はやがて崩壊し、金与正体制が出来上がるだろうと予測する向きがあります。

 それはどういうことか。

 北朝鮮では、4月12日、最高人民会議が開かれました。この日の会議には、金正恩は姿を見せていません。しかし、前日に行われた会議には参加し、コロナ対策に絡んでいたといいます。

 この会議では、国務委員会の大改造が行われ、委員の3分の1以上の人事異動が行われました。
 前外相の李容浩(対米外交のエキスパート)も国務委員を外されていますから、相当な人事刷新です。正恩の妹、金与正党第一副部長は政治局員候補に選出されました。これは、正恩後継者として妹の与正が急浮上したことを意味します。

 こうなると、与正の周りに新しい側近たちが形成されて「与正派閥」が出来上がると見られ、その結果、「正恩派閥」と衝突する可能性もあると考えられます。

 こういう見方は、一つの前例から予測ができるといいます。
 金日成が金正日を後継者に指名した後、親子間の権力闘争が激化した経緯があり、定かではありませんが、今でも、金日成は金正日から暗殺されたという話が根強くあるというのです。

 それ故、兄と妹の派閥同士の権力闘争が遠からず始まると見る専門家は多いのです(まるで韓国の歴史ドラマのようです)。権力闘争の中で、金正恩が「除去暗殺」される可能性も否定できないということです。

 北朝鮮の脱北者を支援する国際組織「自由朝鮮」も動き出しています。彼らは米国CIA(中央情報局)と組んで「金正恩暗殺」を狙うかもしれません。

 それにしても、金正恩は死んだとか、生きているとか、北朝鮮に関する情報は謎めいたものが多く、北朝鮮ウォッチャーはたくさんいるものの、正確な情報をどれだけキャッチできているか不明です。しかし、北朝鮮内部が大きな変革動乱の時期にあることは確かです。