愛の知恵袋 1-2
取り戻そう、“家族の絆”(2

(APTF『真の家庭』より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

挨拶ひとつで世界が変わる

 さて、私たちは、毎年、お正月になれば年賀状を送り、親戚に挨拶回りをしたりします。また、家では「おはよう!」から「おやすみ」まで、家族同士で挨拶をします。出勤中に知人に会えば「あ、どうも!」と笑顔をおくり、会社に着いてから、上司や同僚達にまた挨拶をおくります。

 「こんにちは」「ハロー」「ニーハオ」「アンニョンハセヨ」「アローハ」…。どこの国でも人に出会ったら、にこやかな笑顔と挨拶をおくります。人はなぜ挨拶をするのでしょうか。また、「挨拶」とは何なのでしょうか?

 まず第一に、挨拶は、人間としての「礼儀の第一歩」であると言えます。ある中学校の校長先生が、卒業生に贈ることばとしてこのようなお話をされました。

 「義務教育を終えた皆さんは、これから社会に出て行くことになります。一人前の社会人になるために、二つのことが出来る人になってほしいと思います。まず第一は、“きちんと挨拶の出来る人になること”、第二は、“はがきを書ける人になること”です。この二つがきちんと出来る人になれば、社会でも立派にやっていけるでしょう。しかし、この二つが出来ないとすれば、たとえ大学を出ていても社会人としては不合格になるでしょう」という内容でした。

 そういえば、先日、ある会社の重役をしている友人と会った時、「いやぁ、最近は大学を出ていても満足な挨拶の出来ない社員が多くてね、一から教育のし直しだよ。困ったものだね」とこぼしていました。

 挨拶を、自分の方から丁寧にするということは、「あなたに敬意を払っています」という心の表れですから、相手は嬉しく感じてまた礼儀を持ってこちらに接してくださるでしょう。

 第二に、挨拶は、「愛情表現の第一歩」であるということです。

 先日、近所の奥さんが、数人で話していました。

 「あのね、きのう買い物に出かけた時、道で鈴木さんと出会ったのよ。私を知らないわけないのに、あの人ったら、知らん顔して通り過ぎたのよ」

 「へぇー、そう。いやな人ねー」

 「でしょおー!私すっかり気分悪くなっちゃった。…でもその後ね、斉藤さんに会ったのよ。彼女ったら、20メートルも先から私を見つけてね、駆け寄ってきて、『こんにちは!この前はどうもありがとう!』って明るい笑顔で言ってくれたの。話しているうちに嫌な気分も吹き飛んで、気がついたらルンルンになってたわ」

 「うん、あの人、そんな人よね。私も大好きよ!」

 何気なく聞いていた私は、あらためて、「挨拶」のひとことが、人間の心を大きく左右するものだということを感じさせられました。自分の方から、笑顔で挨拶を送るということは、「あなたに好意を持っていますよ」という愛情表現なのです。

 ですから、私たちは、毎朝、家族に対しても知人に対しても、最高の笑顔で「おはよう!」と声をかけましょう。

 “親しき仲にも、礼儀あり”。そんな家族には、きっと、明るい一家団欒の道が開けてくるでしょう。