愛の知恵袋 1-1
取り戻そう、“家族の絆”(1

(APTF『真の家庭』より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

 皆さんは最近起こっている事件のニュースを聞きながら、何を感じておられますか? 何か底知れない不安を感じておられる方も多いのではないでしょうか。

 日本もバブル崩壊以後は、リストラ、失業、治安の悪化…等で、明日は我が身に何が起こるかわかりません。こんな時代こそ、最後の砦は”家庭”であり、頼みの綱は”家族の絆”です。ところが、ご存知のように、社会では家族間での凄惨な事件が頻発しています。今や、”家族の絆”までもが根底から揺らいでいるのです。

 さらに、それらの事件の周辺には、いじめ、学級崩壊、不登校、ひきこもり、万引き、恐喝、家出、同棲、援助交際、性感染症の蔓延、妊娠中絶、未婚の母…といった子供達に関わる様々な問題が起こっています。

 これらの問題の背景には、社会環境、学校環境、家庭環境の悪化があります。社会環境と学校環境の改善には、国と行政機関と国民一人ひとりの意識転換と粘り強い取り組みが必 要であり、相当の時間を要します。しかし、家庭環境の改善は、私達がすぐにでも取り組めることですから、まずは、ここから取り組んでまいりましょう。

 結婚したものの夫婦がうまくいかない場合は、喧嘩が絶えず、家庭が殺伐とした雰囲気になります。不満とストレスを抱えた父親はアルコールに浸ったり、パチンコやギャンブルの依存症になったりします。母親もストレスを抱えて心に余裕がなくなり、ヒステリックになって夫や子供達にガミガミ言うようになり、幼児虐待や過干渉になりがちです。さらに、夫婦間の衝突が続けば、暴力や不倫問題に発展し、別居、離婚へと突き進んで破綻してしまいます。

 かくして、現在、日本では結婚したカップルの三分の一以上が離婚しています。さらに離婚にまでは至らずとも、葛藤している夫婦がほぼ同数あると見られていますから、今の日本においては、うまくいっている夫婦の方が少ないということになります。

 このような両親の不和が子供の心理に及ぼす影響は、想像以上に大きいものです。両親から来る波動が穏やかで愛情豊かなものではないために、家に帰っても安らぎや楽しさがなく、孤独を感じている子供達が増えています。たとえ、お小遣いをふんだんにもらえても、それによって”心”が満たされることはありません。常に、不安やいらだち、不信や失望といった複雑な心理が錯綜して、とても不安定な状態になっています。特に、自分探しの旅に出る中学生以上になれば、それが表面化してきます。”家族とは何か?”どのようにすれば家族の絆を強く結べるのか? そういったことを真剣に考えなければならない時代になりました。この連載では、夫婦や親子が仲の良い関係を築き、心の通い合う幸せな暮らしを送れるようになるために、どんなことに注意し、どんなことを努力していったらいいのか…といったことについて、お話ししてみたいと思います。