青少年事情と教育を考える 108
中学校教科書と「性の多様性」

ナビゲーター:中田 孝誠

 3月24日、文部科学省が中学校の教科書検定の結果を公表しました。
 2021年度から実施される新しい学習指導要領に合わせて使用されるもので、生徒が「主体的・対話的で深い学び」ができるよう工夫されているのが大きな特徴です。一方で、「性の多様性」についての記述が増えています。

 新学習指導要領が「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)を重視していることから、新しい教科書は生徒が自分で問題を見つけて、自分で調べたり、グループでの議論をしたりするなどして解決する力を養うわけです。その他、主権者教育の内容なども入ります。

 一方で、新しい教科書では「性の多様性」についての記述が増えていると指摘されています。東京新聞3月26日付の記事によると、性の多様性について触れているのは、現在使用されている教科書では5社6点ですが、新しい教科書では9社17点になり、科目も道徳、国語、歴史、公民、家庭、美術、保健体育に広がっています。

 さらにこの記事では、学習指導要領が「異性の理解」「異性の尊重」と記載しているため、男女の淡い恋を取り上げる教科書は多いが、「性の多様性」はいまだに学習指導要領に記載されていないと指摘。学習指導要領から「異性」という言葉をなくしてほしいという、ある出版社の声を紹介して、文科省を批判しています。

 現在使用されている中学校道徳の教科書では、4社でLGBT、性的少数者のことが取り上げられています。ある社の教科書では、性の在り方には「からだの性」「こころの性」「好きになる性」の三つの要素がある、と紹介しています。

 本欄でも以前書きましたが、授業で性の多様性を教えることは、LGBTへのいじめをなくすことにとどまらず、発達段階にある子供たちのアイデンティティーに混乱を与えかねません。

 自分の性別に違和感を覚えて悩む子も少なくないといわれますが、こうした違和感は多くの場合、成長とともに消えていくとも指摘されています。性に関することは、それぞれの子供に合わせて、慎重に対応すべきことです。

 また、例えば高校で使用されている家庭科教科書では、性的少数者への「理解」にとどまらず、性愛の対象が異性以外のこともある、といった記述で、同性婚などを強調するような内容があります。

 中学生から高校へ進む中で、こうした教科書で教育が行われるということは、性の多様性の「理解」にとどまらない可能性があること、そして「異性への理解」などの記述をなくすということは、子供たちの結婚観や家庭観に重大な影響を与えることになりかねないということです。

 現場の先生がたには慎重な対応が求められます。