愛の知恵袋 108
夫を幸せにする妻の“スマイル”

(APTF『真の家庭』229号[2017年11月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

「もう一緒に暮らしたくない」と言う夫

 ある40代の既婚男性の悩みです。妻と離婚すべきかどうかで悩んでいました。

 奥さんは会社の後輩で、社内でも話題の”美人OL”でした。しかも、仕事ができ、意見をはっきりと言える才媛タイプだったので、彼にとってはまぶしい存在でした。あの手この手でアプローチして、やっと結婚にこぎつけて、結婚式の時には、友人たちから「お前! すごいのをゲットしたなあ!」とうらやましがられたそうです。

 しかし、二人の蜜月は長くは続きませんでした。子供を出産した頃からギクシャクし始め、その後はことあるごとに衝突し、今では家庭内別居の状態になりました。

 彼が肩を落として、「もう、これ以上、無理です…」と言うので、聞いてみました。

 「そんなにきれいで優秀な女性だったのに、どうして嫌になったんですか?」

 「頑として自分の考えを譲らないというところが嫌です。それにいつも命令口調なので不愉快です。特に、言い方がきついんです。だからいつも喧嘩になります」

 「そうですか…。“優しい”と思った人が、実は“頼りない人”であったとか、“頼もしい”と思った人が、実は“きつい人”だった…とかいう事はよくありますよ」

 「まさにその通りでした。一緒に暮らしてみて、思い知らされました」

 「しかし、どんな人と結婚しても、長所と短所はありますよね。これは表と裏ですからついてきますよ。“短所は片目でみて、長所は両目で見なさい”と言いますよね」

 「性格の違いなら、しょうがないんでしょうか。でも、どうしても耐え難いことが、もう一つあるんです…。彼女には“笑顔”がないんです。外では笑うんでしょうが、家の中ではめったに笑いません。特に、私の前では…全く…」

 「でも…、彼女は、美人で可愛いんじゃないんですか?」

 「とんでもない! 今の私には、恐ろしい顔でしかありません。こんな顔を見ながら一生暮らすのかと思うと、ぞっとします」


笑顔を失うと“幸せ”が逃げていく

 後日、彼の奥さんと会って、一部始終を話しました。

 「私にも言い分はありますが、でも、彼の言うことには思い当たることがあります。やっぱり私のほうが問題だったのかもしれません。でも…、私の顔がそんなに恐ろしい顔だったなんて、ショックです。全く気が付きませんでした」

 そこで、奥さんと、日ごろの言葉づかいの転換と、“スマイルの効用”についての話をして、もう一度、二人の幸せを取り戻す計画を立てました。

 人と人の意思疎通は、言葉がカギとなります。従って、夫婦の間でも言葉づかいに対しては、細心の配慮が必要です。

 それと同様に、人は耳で聞く言葉以上に、互いの顔の表情を見て対話をしています。表情で相手の気持ちや喜怒哀楽の感情を感じ取りながら暮らしています。

 外国人と対面した時、言語が全く通じなくても、にっこりと笑えば、一瞬にして相手の心に好意が伝わります。“スマイル”の一撃は、千万の言葉に勝るのです。

 “笑顔”は男にとっても、女にとっても不可欠の大切な素養ですが、特に、女性にとっては、決定的ともいえるほど重要な要素だと思います。

 私が印象深く覚えている言葉があります。たしか、三島由紀夫さんの言葉でした。

 『女は、美しくないということ自体で、すでに罪である』
 「えーっ、そんな。ひどい! セクハラだ!」というような声が聞こえてきそうですが、確かに、このままではきついですね。しかし、この言葉には続きがあるのです。

 『女は、美しくないということ自体で、すでに罪である。しかし、どんな女も笑顔は美しい!』

 実に、名言です。この言葉には、奥深い真理が秘められているような気がします。

女性のスマイルが、みんなを幸せにする

 女性の優しい笑顔や明るい笑い声には、この世の何物にも勝る“美しさ”があります。夫も子供たちも、そこに心地よい安らぎ、喜び、希望を感じることができます。

 笑顔を絶やさない女性は、自分の内面をコントロールできている賢い女性であり、“美しい女性”です。そんな女性と暮らせる男性は、本当に幸せです。

 世の中では、不美人のことを“ブス”と言いますが、私に言わせれば、“ブス”というのは「ブスっとした人」即ち「笑顔のない人」に送るべき称号だと思っています。

 顔だちが良くない場合は、「不細工」とか「不器量」と言ったり、あるいは、「お亀」、「醜女」、「鬼瓦」とかいう言葉もあります。

 もちろん、そんな女性とて、失望する必要は全くないのです。にっこりと笑えば、たちまち、人の心をとらえて離さない“天下一の美人”になれます。

 世界中の男たちは、そんな妻の“スマイル”が見たくて、雨にも負けず風にも負けず、一生“尽く尽く奉仕(ツクツクボウシ)”をしているのです。

 ついでにひと言。夫婦カウンセリングをして30年以上になりますが、私の知る限り、顔の不器量が原因で離婚されたという話は、一度も聞いたことがありません。