夫婦愛を育む 105
“よい親”という幻想

ナビゲーター:橘 幸世

 同年代の友人とのおしゃべりとなると、決まって出る話題が子供のこと。それぞれ悩みや心配が尽きません。ややもすれば、あの時の、あの~がいけなかったのでは、などと思いがちです。

 子供が生まれて親になると、大半の人が頑張って子育てしよう、いとおしいわが子を立派に育てよう、親の務めをきちんと果たそうと思います。でも、子供の成長過程を通してずっと“よい親” “優れた親”でいられる人はまれである、とある専門家は書いています。

 それぞれの生まれ持った個性と育った環境から、人間関係において得手不得手が異なります。
 目上の人との関係が上手な人もいれば苦手な人もいます。目上の人は苦手でも、下の面倒見の良い人もいます。同性間の付き合いが上手な人、異性間でも自然に話せる人、さまざまです。

 同様に、わが子に対しても、その成長段階で得手不得手が出てくることがあります。赤ちゃん時代はかいがいしく世話をし、親としての喜びを感じていたのに、子供が反抗期に入りイヤイヤばかりが返ってくると、うろたえストレスがたまり優しくいられなくなる人もあるでしょう。思わずきつく怒ってしまった自分を責め、落ち込むかもしれません。

 二人の幼子を持つ若いお母さんと話す機会がありました。
 彼女のご主人は、上の子が生まれた当初は、あまりに小さくてどう扱っていいか分からず、育児には積極的に参加しませんでした。が、やがて子供が言葉を発するようになると面白くなって、上手に相手をしてくれるようになったそうです。

 中学生・高校生のわが子の接し方に悩む親もいれば、かえって物事が分かるようになった分、わが子と話しやすいと感じる親もいるかもしれません。

 良好な親子関係を築くには、子供の欠点やさまざまな感情を受け止めることが大切ですが、同時に、子供の全成長段階で常に“よい親”でいることは難しいという、親としての自身の限界を悟り受け入れることも、同じくらい大切かと思います。

 かつての大家族時代には当たり前にあった祖父母や叔父・叔母からのサポートがなくなって久しい核家族時代。夫婦共働きが主流となり、「ワンオペ」などといった言葉が使われるようになった昨今、一人の親の負担は益々大きくなったように感じます。

 ならばこそ、“よい親” “完璧な子育て”といった幻想を捨て、初めてのことにチャレンジしている新米親は、失敗も「ま、いっか」「ま、しょうがない」と自分を責めないようにしましょう。
 時には、子供に対しても素直に認め、謝ればいいのです。成人した子供と、かつての接し方や出来事について話し合い、整理することが望ましい場合もあるかもしれません。

 子育ては親育て、といわれますね。


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