夫婦愛を育む 104
いい夫婦してるな、と思いました

ナビゲーター:橘 幸世

 20代前半の頃、葛藤を抱えていた私は、アドバイスを求めて先輩夫婦の家を訪ねたことがあります。

 決して広いとはいえないそのマンションで、小さなお子さんがいて、忙しい夫人の時間が空くのを待っている間、私がそこで感じた空気は、「ずっとここにいたい!」というものでした。
 正反対のお二人が一つになって作り上げている世界は、何とも言えない心癒やされるものでした。

 現在、私も家庭人となって久しいですが、お二人の醸し出す雰囲気にはまだまだ遠いと感じます。

 先月、実家を継いだ兄夫婦を3年ぶりに訪ねました。昨年仕事に区切りをつけて、今は夫婦二人穏やかに生活しています。

 迎えの車の中で兄は、体調を崩したこと、今は回復したことなど、近況を丁寧に話してくれました。
 その中で、「○○(兄嫁のこと)がいろいろ用意してくれるんだ」と、妻が健康に気を使って食事の工夫をしてくれていると言いました。

 兄宅に着くと、玄関で迎えた彼女に、「~と~のことは話しておいたから」とサラッと伝えています。出してくれた食べ物に私が恐縮すると、今度は兄嫁が「いいのいいの、また□□さん(兄のこと)が買ってきてくれるから」と笑顔で言って、私の遠慮心を軽くしてくれます。

 お互いが、相手がやってくれることを本当に自然体で言ってくるのです。
 わが兄ながら、いい夫婦してるな、と思いました。

 母は最後の数カ月を病院で過ごしましたが、毎日午後4時頃、兄嫁が仕事帰りに病院に顔を出していました。

 私が見舞った折、母が「4時になったら○○が来るんだ」と言いました。母は楽しみにしていて、待っているんだと分かりました。私が付き添っていた時、痛みがつらくて思わず叫んだのが「○○さ~ん」と兄嫁の名前でした。遠方に住む娘よりも、そばにいる嫁が頼りだったのでしょう。娘として、これ以上の感謝はありません。

 兄も仕事帰りに毎日見舞っていましたが、ある晩母が眠っていたので起こさずに帰って来たことがありました。それを聞いた兄嫁は、もう一度病院に行くよう促しました。
 普段は兄を立てて兄の判断を尊重している彼女ですが、この時は違いました。目が覚めた母が、今日は来なかったと誤解して寂しい思いをしないようにとの配慮でしょう。良き支え手のお手本のような人です。

 いつもニコニコしていて、気負いのない兄嫁を、私の娘は「お嫁さんの理想像」と言ったことがあります。
 夫はもちろん、姑(しゅうとめ)からも小姑(こじゅうとめ)からも姪(めい)からもよく思われている兄嫁は、一見平凡な主婦ながら、なかなかレアな存在かもしれません。たくさん苦労してきた兄に良き伴侶がいることを、心から喜んでいます。


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