青少年事情と教育を考える 102
アメリカの大学の「結婚教育」

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回、日本の大学での結婚教育について取り上げましたが、今回はアメリカの例を紹介します。

 アメリカでは2000年前後から「結婚準備」の教育プログラムを導入する高校や大学が増え、注目を集めました。中学3年に当たる年齢から義務付けた州もありました。

 プログラムは主に人間関係の築き方を宗教や心理学などの観点から教えます。
 具体的な結婚生活を送る上で必要な技術を学ぶコースを開講したり、結婚と家庭について研究する専攻を設けたりする大学もありました。また、学生と地域の住民に向けてのセミナーを行う大学もあります。

 州政府と大学が共同プロジェクトとして結婚教育のプログラムを立ち上げ、地域の専門家と連携して、既婚・未婚問わず、より良いパートナーの関係を築くコミュニケーションの方法などを教育する所もありました。

 こうした教育を大学で結婚前のカップルに実施するようになって、離婚率が低下したという自治体もあります。

 結婚教育が広がった背景には、アメリカの深刻な家庭崩壊と、それが社会に重大な影響を与えているという危機感があります。家庭の安定が社会の安定、福祉につながるという考えから推進されたわけです。

 そして連邦政府も、こうした教育が成果を上げていると評価し、支援してきました。

 ところで、アメリカでは結婚教育とともに、1990年代頃から結婚を保護・促進するための結婚運動が全米に広がりました。また、性教育でも性的自己抑制教育が盛んになりました。

 ただ、こうした結婚運動は2010年以降、オバマ政権の時期には勢いが低下していきます。性的自己抑制教育もオバマ政権では重要な教育政策から外されました。何とか民間を中心に続けられてきたという状況です。

 しかし、トランプ政権は性的自己抑制教育を重視する方向を打ち出し、教育を推進する民間団体を支援、予算措置も講じています。

 結婚準備教育が今後、どのような展開になるか。大統領選挙と関連する大切なテーマだといえます。