夫婦愛を育む 100
分かってくれているから、頑張れる

ナビゲーター:橘 幸世

 私が住んでいる所は人口減少が進む地方都市です。
 地元同士で結婚している人も多く、周りに親族がいるのは珍しくありません。ですので、親族関係の悩みや葛藤をしばしば耳にします。跡取りに嫁ぎ、義理の親と同居している場合、夫の兄弟(特に姉たち)がやって来てあれこれ言われて大変、という話はいろいろな所から入ってきます。

 義姉たちが実家離れができていないのか、弟夫婦を信じていないのか、その具体的な言動を聞くと、嫁の立場の友人たちに同情するばかりです。
 「旦那さんはそういうときどうするの?」と、盾になってくれないのか尋ねますが、なかなか難しいケースが多いようです。

 同じ町内に住む70代のKさんは、早くに夫を亡くし、仕事をしながら長年お姑(しゅうとめ)さんの世話をしてきました。今のような介護制度がない時代、徘徊(はいかい)などでずいぶん苦労したそうです。近くに夫の弟たちがいましたが、「口ばかり出して(何か手伝ってくれるわけでもない)…、それで余計に大変だった」とその話になるとこぼします。

 私の母も長年寝たきりの姑の世話をしてきました(そのためか、Kさんには何か近しさを感じています)。愚痴一つ言うことなくやっていた母は、昔まだ子供だった私にこう打ち明けてきました。

 「“○○(母の名前)は、まるでおふくろの世話をするために嫁いできたみたいだな”と、お父さん(私の父)が言ったの。そして私に頭を下げたの」

 自分の苦労を夫が分かってくれていた。それだけで母はやり抜けたのかもしれません(父の早い他界後も)。

 今になって思えば、その感動を誰かに言いたくて、でも言える相手が他にいなくて、娘に言ったのかもしれません。
 私は黙って聞いていただけでしたが、子供心に漠然と、父もすごいなと思いました。小さな田舎町ですが、いろいろな役を頼まれるような父でした。妻の苦労を分かって、いたわりと感謝を具体的に伝える、しかも頭を下げて…!(大正生まれの父です)

 とうに父の年齢を超え、さまざまな経験を経た今、あらためて立派な父だったと感じます。
 私も、義理の母に孝行するのは当然と思って頼まれ事は最優先していますが、夜主人にその日のことを伝える時、頑張った自分を認めてほしい思いが心の内にあるのを感じることがあります。(先人の苦労に比べたら)大した事ではないのに、小さい器だな、と情けなくもなりますが、それが現実です。そして、そんな思いを抱くのは私だけではないでしょう。

 自分の器を広げる努力をしつつも、人に対しては、事の大小を問わず感謝やねぎらいの言葉を惜しむことなく発していきたいと思います。


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