青少年事情と教育を考える 91
SNSの危険をどう理解させるか

ナビゲーター:中田 孝誠

 大阪市住吉区で小学6年生の女の子を誘拐、監禁した疑いで、35歳の男が逮捕されました。男の自宅では6月から行方が分からなくなっていた茨城県の15歳の女子中学生も保護されました。

 警察庁の統計によると、少年少女に対する「略取誘拐・人身売買」は、平成30年度、304件に上り、過去10年間で最多です。10年前(平成21年)が156件ですから、倍増しています。このうち子供の年齢が12歳以下だった事例が少なくとも110件ありました。

 また、大阪市の女の子の事件では、男がSNSで女の子に「別の女の子の話し相手になって」と誘い出し、連れ去ったと見られています。

 SNSをきっかけにして子供が犯罪被害に遭う事件は繰り返し起こっています。警察庁のまとめでは、平成30年に何らかの犯罪被害に遭った児童は1811人に上っています。このうち学校でSNSの危険性などの指導を受けていた児童は5割だけでした。

 もちろん、SNSの危険性を子供に理解させる取り組みは行われています。
 大阪府が携帯電話やスマートフォンを小中学校に持ち込むことを許可するに当たって作成したガイドラインでは、保護者が子供に対して「インターネット上で知り合った人とは会わない」よう指導することを明記しています。学校に対しても、ネット上のいじめや個人情報の流出などとともに「SNS上で知り合った人と会うことでおこる連れ去りや性被害について」指導するよう求めています。

 女の子の母親も、知らない人に付いていかないよう言い聞かせ、スマートフォンの使い方も定期的にチェックしていたようです。それでも、ルールを守らせることは簡単ではないということでしょう。

 識者からは、子供たちの犯罪被害を防ぐため、スマートフォン利用についての家庭でのルール作りや、何でも話すことができる親子関係を作ることが大切といった意見が出ています。ただし、親がルールを決めていると思っていても子供はそれを認識していないという「親子のギャップ」がある家庭も少なくありません。

 子供の使っているアプリについて親も詳しくなって、子供がどんな使い方をしているかを知る必要があるという声もあります。

 親にとって決して簡単なことではありませんが、親子の絆を深める意味でも子供と常にコミュニケーションしながら、子供の成長に応じてルールを見直すなど、親が継続して取り組むべき子育ての重要課題になっています。