青少年事情と教育を考える 90
教師が置かれた現状

ナビゲーター:中田 孝誠

 教師の長時間労働は、今や“ブラック”と言われるほど大きな問題になっています。また、神戸市の小学校で教師によるいじめが発覚したことをきっかけに、パワハラや教師同士の人間関係で悩んでいる教師が多いことも明らかになってきました。

 また、最近こういう話もありました。
 中央教育審議会は、文部科学大臣の諮問を受けて各界の有識者が教育の在り方や改革の方向性を議論する機関です。その中教審の10月4日の分科会で、委員を務める高校の校長から、次のような発言があったというのです(「教育新聞」1010日付)。

 分科会では、ICT(情報通信技術)の活用や小学校の教科担任制について話し合われていました。その中で校長は現場の教師たちの厳しい現状を訴えたのです。

 世の中の変化を踏まえて教育も変わらないといけないことはよく分かるし、新しい取り組みをする場合は教師全員が理解するための研修を増やす必要があるが、そうするためには授業をカットするしかなくなる。しかも一方では残業を減らすため働き方改革をやるように言われるが、例えば(小学校で必修になる)プログラミング教育のように新しいことにも取り組まなければならない大変さがある、というわけです。

 そして校長は「新しい施策に現場がついて行きたいと思っても、ついていけない。次から次に要求があり、そこに働き方改革と言われる。これでは『もう、やってられない』と、現場の教師は思ってしまう」と強調しました。

 最近、大学入試の英語で予定されていた民間試験の導入が延期になりましたが、高校では数年前から導入に合わせた準備をしてきました。結果として現場に混乱を引き起こすことになってしまったわけです。また、教師の働き方改革のために導入されようとしている変形労働時間制という制度についても賛否の声が上がっています。

 ただ、教師という職業には、他の職業に比べて、やりがいや充実感を感じている人が多いという調査もあります。実際、教師の負担になっているといわれることが多い部活動ですが、中には部活動で生徒たちと一緒に活動することで精神的な力を得ているという教師もいます。

 教師が抱えている課題を解決するのは簡単ではありません。それでも、校長が先頭に立って改革を進めるなどの事例も増えてきています。そのような、モデル的な学校を広げていく必要があります。

 そして、家庭や地域社会が教師と協力していくことも不可欠です。