信仰と「哲学」32
本体論入門~再評価されているスピノザ

神保 房雄

 「信仰と『哲学』」は、神保房雄という一人の男性が信仰を通じて「悩みの哲学」から「希望の哲学」へとたどる、人生の道のりを証しするお話です。同連載は、隔週、月曜日配信予定です。

 スピノザは17世紀オランダの哲学者です。名前は聞いたことがある、という人もいるでしょう。不思議なことですが、スピノザの哲学は20世紀終盤以降、世界の著名な思想家によって再評価され、知的流行の最先端となっているのです。

 日本では哲学者の國分功一郎氏(東京工業大学教授)がNHKの番組で、スピノザの代表的著作『エチカ』を非常に分かりやすく紹介したことによって、その邦訳がよく売れるようになりました。欧米ではフランスの哲学者・ドゥルーズ(19251995年)らがスピノザを高く評価し、多くの思想家に極めて大きな影響を与えました。

▲スピノザ(ウィキペディアより)

 現代社会は、多様な問題を抱え混乱と不安が広がっています。宗教対立、自然環境の破壊、AI(人工知能)との共存問題など、これらをどのように捉えるべきかという本質的な問いに対して、スピノザの思想は一つの方向性を示す内容を持っているといえるのです。

 スピノザは163211月、オランダ・アムステルダムのユダヤ人街に生まれています。44歳という短い人生でした。代表作『エチカ』は、彼の死後出版されています。
 スピノザは16772月、肺結核が原因で亡くなったとみられていますが、死後、友人たちが匿名で資金を集めてその年の末に刊行した『遺稿集』の中に『エチカ』が収められていたのです。

 エチカは「倫理」の意味です。神、善と悪、自由などを論じて、他者との関係において「いかに生きるべきか」を論じています。

 スピノザはその思想故に、ユダヤ教会から破門されました。神はいかなるおかたなのか、人間との関係をどのように捉えるべきかなどの根本的視点が「異端」とされる原因となったのでしょう。何よりも本体、実在としての神をどのように捉えるかという問題、「本体論」にこそスピノザの特徴があるのです。

 文鮮明師は「本体論」の再構築と学びの必要性を強調されました。スピノザの神観、人間観が文師の「神主義」と同じという意味ではありませんが、その理解を助けて強い確信に導く材料を提供してくれるものであると考えています。