青少年事情と教育を考える 73
子供を保護するための「再婚禁止期間」

ナビゲーター:中田 孝誠

 有識者でつくる法務省の研究会が、民法の「嫡出推定」に関する見直し案を公表しました。

 現在の民法では、女性が離婚してから100日は再婚を禁止する「再婚禁止期間」を設けています。

 なぜ「再婚禁止期間」という規定があるのでしょうか。
 民法には、結婚から200日以降に生まれた子は現在の夫の子供、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子とする「嫡出推定」があります。

 これは法律上の父子関係を早期に確定し、子供の養育環境を安定させるための制度です。妊娠前後に離婚、再婚して父子関係が混乱することを防ぐというのが一つの理由です。
 また、前の夫の子を妊娠している可能性のある段階で再婚するのは好ましくないという倫理的な背景もあります。

 ただ、女性が離婚直後に別の男性との間の子を出産した場合、戸籍上は前夫の子供になるため、女性が出生届を出さないまま子供が無戸籍になるという問題がありました。

 このため今回の見直し案では、300日規定は維持しながら、女性が再婚していれば例外として現在の夫の子、結婚から200日以内に生まれた子も現在の夫の子と推定します。こうすることで子供が無戸籍になる事態を避けることができるため、再婚禁止期間は不要としています。

 もともと「嫡出推定」制度では、実際の血縁関係が異なるケースもあり得ます。しかし、子供の心身の成長に配慮し、子供の最善の利益を第一に考えて、法律上の親子関係を血縁以上に重視するというのが民法の立場です。

 実際、民法には嫡出推定の他にも、家族と結婚を保護する条項がいくつか規定されています。
 再婚禁止期間について付け加えると、今回の見直し案が決まれば法律上の父子関係が定まらないというケースは避けられるかもしれません。

 ただ、別の見方をすると、親子関係を混乱させるようなことは妻(女性)だけが起こすわけではなく、夫(男性)にも可能性があります。
 万一、夫が離婚前後に相手の既婚女性が妊娠するようなことがあると、生まれてくる子の身分を揺るがすことになってしまいます。もちろん道徳的、倫理的にも好ましいことではありません。

 一部のフェミニストの人々からは、再婚禁止期間は婚姻の権利に男女差をつけた差別だという声もあります。差別かどうかはともかく、幸福な結婚や夫婦関係、親子関係を保ち、健全な社会を守る上でも、再婚禁止期間を廃止するのではなく、むしろ夫(男性)にも同様の規定をもうけることが妥当ではないでしょうか。