青少年事情と教育を考える 72
日本の高校生は社会貢献の意欲が低い?

ナビゲーター:中田 孝誠

 国立青少年教育振興機構が6月、高校生の留学に関する国際意識調査を発表しました。その中で、日本の高校生は自国に満足しているものの、社会貢献意識が低いと指摘されています。

 日本の高校生で「留学に興味がある」という回答は51%で、米国、中国、韓国の4カ国の中で最も低く、逆に「留学したいと思わない」が48.6%で最も高くなっています。
 その理由として「日本のほうが暮らしやすいから」「外国で一人で生活する自信がないから」などを挙げています。

 また、「外国の文化や生活に興味がある」(日本78.1%)、「外国の人と友だちになりたい」(同71.1%)など、外国への関心が他国に比べて低い傾向がありました。

 一方、「私は国のために尽くしたい」と答えたのは47.4%で、他国(米国86.7%、中国95.4%、韓国58.9%)を下回っていました。「国の発展は自分の発展につながっている」(日本49.6%、米国52.4%、中国89.3%、韓国72.5%)も同様の傾向でした。

 しかし、「自分が日本人であることに誇りをもっている」(日本82.1%)や「自分の国が好きだ」(同90.2%)などは他国と変わらない高い割合を示しています。決して国を嫌っているわけではありません。

 ちなみに他の質問では、「自分は物事に積極的に取り組む方だ」や「私は他の人々に劣らず価値のある人間である」では、他国の割合より低いものの、2011年の調査に比べて上昇していました。つまり自己肯定感などは改善しているわけです。

 こうした結果を分析した報告書では、外国への関心が低かったことも含めて、「日本の高校生が社会に対する帰属意識が低く、自己の狭い世界の中にとどまりながら、挑戦を避け失敗しないため、生活に不安や不満を感じず、自己意識も傷つかずに済んでいる状況を示しているのかもしれない」「大人になり社会の中で自立してよりよい自己実現を果たすためには、社会との関わりをもち、そこで向き合うことになる様々な問題を解決するために試行錯誤を重ねる積極的な生き方が求められる」(同機構・青少年教育研究センター長の村上徹也氏)と分析しています。