夫婦愛を育む 70
「そんなことで私の幸せを奪わせないぞ」と叫んでみた

ナビゲーター:橘 幸世

 遠方に住む知人が、先々回の本欄No.68「恨みを手放したら、幸せがやって来る」を読んで、珍しく電話をくれました。

 読んだ翌日の日曜の午後、知り合いからの思いもよらない言葉に「霊人体がプシュ~ッとしぼんじゃった」そうです。

 あまりのショックに愕然(がくぜん)として、「他の人はここまで落ち込まないかもしれないけれど、自分は力がすっかり抜けてしまった。何をする力も出ず、気を紛らわそうにもテレビを見る気にすらならない。よほど夕食の準備もやめようかと思ったが、何とか最低限の支度はした」とのこと。

 夕方帰宅したご主人に話を聞いてもらい慰めてもらっても、翌日親しくしている先輩に電話して話を聞いてもらっても、気持ちは晴れません。引きずったままです。

 無理に元気になろうとするのもしんどいなと、力ないまま過ごし、まだ早いけどシャワーでも浴びようかと浴室に入りました。そこで、二日前に読んだエッセイを思い出したそうです。

 「そうだ、私には話を聞いて励ましてくれる夫がいる、友人もいる。幸せなんだ」と思って、シャワー中「こんなことで私の幸せを奪わせないぞ」と2、3度声に出して言ったそうです。

 「あれで、8割がた気持ちが回復したの。ありがとう」と言って、彼女は電話を切りました。

 エッセイが功を奏したのか、彼女が自分の感情を封印しないで向き合い感じ切ったから前向きになれたのかは分かりません。
 いずれにせよ、風船がしぼむようにプシュ~ッとしぼんだ気持ちが二日足らずで転換できたと聞いて、とてもうれしくなりました。この先また同様の事が起きた時、同じようなパターンで切り替えていったら、やがて落ち込み度合いも小さくなるかもしれませんね。

 ポジティヴ思考がいいことは誰でも知っています。けれど、人によってはなかなかそれに徹しきれません。各人の思考の癖があるからです。自分を客観視して思考の癖を知っておくと、自分に合った、ネガティヴからポジティヴへの転換の鍵が見つかるかもしれません。すぐには見つからなくても、努力していけば、いずれストンと腑(ふ)に落ちるメッセージに出会えるでしょう。そうやって、少しずつ幸せ体質になっていきたいものです。

 でも大前提として、仮に自分はネガティヴになりがちだと思う人も、そんな自分に駄目出ししないこと、一生懸命生きている自分を愛(いと)おしむことを忘れないでください。