夫婦愛を育む 69
怒らないようにと思っても怒ってしまう

ナビゲーター:橘 幸世

 一室で母娘が一緒に遊んでいます。娘は1~2歳でしょうか? おもちゃで遊ぶ娘の傍らに座って若い母親が相手をしています。その部屋には大きなミラーが壁に掛けてあります。実はこれはマジックミラーで、ミラーの反対側には女性が二人、隣室でその様子を見ています。彼女たちは時折マイクで母親に語り掛け、母親はイヤホンでその指示を受けています。

 「あ、そこは何も言わずに見守りましょう」
 「いいですね~、その調子です」
 「具体的な褒め方、パーフェクトです」

 これは、NHK『クエスト』という番組のワンシーンです。番組のテーマは児童虐待。

 近年児童虐待による痛ましい事件が続いています。もっと行政が積極的に介入して悲劇を防げなかったのか、ということが論じられていますが、それだけでは明るい未来は見えません。

 「虐待の連鎖」とよく言われます。自分を虐待した親のようにはなるまいと固く思っていても、いざ親になって自分の子供を育ててみると、親と同じことをしていてがくぜんとする。優しくしたいのに、怒りたくないのにカーッとなって自分を抑えられなくなり怒ってしまう。そして怒鳴ったりたたいたりした後で自己嫌悪に陥る。

 これは講座でお話ししている‟習慣化した自己破壊的行動”の一つかと思います。一般的に、自分が接せられたような接し方が自分の中から出てきがちで、修正には結構なエネルギーを要するかもしれません。

 番組で取り上げていたのは、そんな悩める親たちを対象とした、育児スキルを身に付ける練習プログラムです。
 残念ながら番組の最後の数分間しか見なかったので推測ですが、恐らくは、それ以前にカウンセリングをし、望ましい接し方を示した上で、実践練習しているのでしょう。
 実践練習を積み重ねてこそ、古い習慣から脱して新しい習慣を身に付けることができます。こんな支援プログラムが広がってほしいものです。

 指導のポイントは、「子供の良くない行動は無視して、良い行動に目を向けていく。褒めるときは何を褒めているか具体的に子供に伝える」です。それによって、子供の良い行動が増え、親は暴力につながらない子供との関わり方ができるようになります。

 幸福の原則はやはりここでも一緒でした。

 「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる」というウィリアム・ジェームズの言葉を聞いたことのある人は多いかと思います。誰でも、幸せにつながる行動パターンを習慣化して、新しい世界を切り開くことができるのです。