世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

中露首脳会合~習氏「トランプ氏は友人」?

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 6月3日から9日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 野党、同性婚制度化へ改正案提出(3日)。トランプ大統領、ヨーロッパ歴訪へ出発(3日)。中国・天安門事件30周年(4日)。日韓外務省局長、徴用工問題巡る仲裁委設置を協議(5日)。中露首脳会談、戦略的相互関係を確認(5日)。共産党、参院選の公認候補を無所属で(6日)。英国メイ首相、保守党党首辞任(7日)。米、「メキシコ関税」見送りへ(7日)、などです。

 今回は、中露首脳会合(会談と国際会議参加)について説明します。

 中露首脳会談が6月5日、モスクワで行われました。続いて両首脳は6~8日まで、「サンクトペテルブルク国際経済フォーラム」に参加し、両国の結束を示す舞台を演出したのです。

 首脳会談後に共同声明が出され、トランプ政権のイラン核合意離脱やINF(中距離核戦力)全廃条約破棄、米国の「宇宙軍」創設計画などを批判しました。

 ロシアと中国は現在、共に米国の経済制裁下にあります。
 声明では「いずれかの国による一方的な経済制裁に反対する」とうたい、特に、トランプ政権が呼び掛ける中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)製品の排除に反対して、「国家の安全を口実にして、情報通信技術製品の市場参入やハイテク製品の輸出を不必要に規制することに反対する」と明記したのです。

 ファーウェイと露大手通信会社MTSの幹部は首脳会談後、次世代通信規格「5G」の協力に関する合意文書に署名しています。

 続く6日からの「経済フォーラム」では、習氏とプーチン氏の態度に「温度差」が感じられる場面がありました。特にトランプ氏を刺激したくない習氏の姿勢が印象的だったのです。

 プーチン氏は全体会合での演説で、米国が世界経済の成長を妨げていると名指しで批判。ロシア産の天然ガスを欧州に運ぶ海底パイプライン「ノルド・ストリーム2」建設に米国が反対したこと、さらにファーウェイ製品の排除を挙げながら、「経済エゴは紛争を生みかねない」と批判し、米国は「デジタル技術戦争」を仕掛けていると述べ、「新技術の独占は世界を不安定にする」と述べたのです。批判する相手が違う気がします。

 一方、習氏は米国批判を抑えていました。
 会合での質疑で、「米国とは貿易摩擦を抱えているが、われわれは相互に密接に結び付いている」と述べ、「トランプ大統領は友人だ」と語ったのです。米国との貿易戦争を「新たな長征」と位置付けた国内での習氏の姿勢とは対照的です。
 習氏の苦悩がにじみ出ていました。