世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

台湾、同性婚合法化へ。アジアで初

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 5月13日から19日までを振り返ります。

 この間、次のような出来事がありました。
 米、対中関税第4弾を発表、3805品目(13日)。中国、対米報復関税上乗せ発表、600億ドル対象(13日)。米露外相、関係改善で一致(14日)。北朝鮮国営中央通信、深刻な干ばつ過去37年で最低と報道(15日)。台湾、同性婚合法化へ。アジアで初(17日)、などです。

 今回は、台湾立法院(国会)が同性婚を合法化する特別法案を可決したことについて説明します。
 5月17日に可決成立し、24日に施行されることなりました。アジアで初めてとなり、今後、日本への影響も避けられません。

 法律条文には「同性の二人は、共に生活を営むために、親密、排他的で、永久に結ばれた関係をつくることができる」とあり、戸籍を扱う行政機関で「結婚登記を行う」と規定されています。

 台湾の憲法裁判所に当たる司法院大法官会議が17年、同性婚を認めていない現行民法について、結婚の自由、人民の平等の権利を認めた憲法に反するとの判断を示し、19年5月までに法改正をするよう求めていました。

 蔡英文総統は自身のツイッターで、「19年5月17日、われわれは真の平等に向けた大きな一歩を踏み出し、台湾をより良い国にした」と投稿しました。
 蔡氏は元来、同性婚合法化支持の姿勢を示しており、16年の総統選挙においても明確に主張していたのです。

 同性婚合法化の法的措置が、大法院が求めていた民法改正ではなく特別法となった背景には、昨年11月の住民投票(地方選挙と同時に実施)の結果があります。住民に問う項目の中に同性婚を巡る内容が含まれていました。
 結果として、同性婚反対派が主張する三つの案が成立していたのです。

 その三つとは、①婚姻は一男一女によるものと民法で規定する、②民法改正外の方法で同性パートナーの権利を保障、③小中学校でLGBT教育をすべきではない、というものです。 
 住民投票で民法改正反対の意思が示されたのです。

 同性婚や同性のパートナーの権利を保障する法律を持つ国・地域は世界の約2割となっています。
 現状は欧米が中心です。アジアでは、タイでも昨年、同性カップルが婚姻に準じるパートナーとして登録できるようにする法案が閣議決定されています。

 台湾・民進党は若者の支持を固める意向もあって特別法成立を進めました。しかし民進党の伝統的な支持基盤であるキリスト教系の宗教団体などは、同性婚の合法化を激しく批判しています。
 来年1月の総統選挙に良い結果をもたらすとは限りません。