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通いはじめる親子の心 11
子供の立場に立ってみる

 アプリで読む光言社書籍シリーズ第6弾、『通いはじめる親子の心〜子供の気持ちに「共感」する』を毎週火曜日配信(予定)でお届けしています。

多田 聰夫・著

(光言社・刊『通いはじめる親子の心〜子供の気持ちに「共感」する』より)

第二章 親の愛情が届いていない

子供の立場に立ってみる
 親は、子供に指示したり、期待したりしますが、なぜその指示をするのか、なぜそう願うのかを説明していないことが多いのです。

 親は子供に対して何を期待しているでしょうか。多くの場合、自分の要求や期待が満たされることを願うでしょう。ところが、子供は「あなたが私のことを大事に思っていると分かるまで、あなたの意見に興味はない」と思っているのです。

 子供を理解しようと努力してみると、子供の心に親への信頼が生まれるようになります。その努力を続けることによって、徐々に「自分を大事に思っていてくれている」と感じてくれるようになるのです。

 子供が、傷つきやすい自分をさらけ出せる、支えと励ましが受けられる環境をつくることが大事です。「ここにいてもいいんだ」とか、「ここにいる人は、自分がここにいることを望んでいてくれている」とか、「自分に関心を持っていてくれている」と感じられる居場所が必要なのです。それがあって、未来に向かって前進できるようになります。

 子供は、親の動機を見抜く天才です。親として、しっかりと子供に愛が届くようにするために、子供の気持ちをしっかりと共感してあげましょう。そうすれば、今までの傷を乗り越えていけるようになるのです。

 人間は、自分の眼鏡で、周りの世界を見てしまうものです。しかし、物の見方は人それぞれです。

 一度、お互いの眼鏡を交換して見てみたらどうでしょう。相手の眼鏡で見てみると、ずいぶん違うものです。近視の人は近くのものは見えるけれども、遠くのものがよく見えません。遠視の人は遠くのものは見えるけれども、近くのものがよく見えません。近視の人と遠視の人が眼鏡を取り替えたら、どうなるでしょうか。

 母親と幼稚園児の子供が手をつないで、多くの観客の中で花火を見ることを考えてみましょう。母親は花火を見ることができますが、幼稚園児の子供は背が低すぎて見ることができません。母親が子供と同じ目線に立ってみれば、人のお尻しか見えないことが分かります。子供の目線で見てみることが必要なのです。

 子供と話すとき、親の話の内容には願いや要望があったり、注意があったりします。それを聞く側の子供の立場に立ってみることが必要です。

 親は、感情的になって子供に対応してしまうことがよくあります。「売り言葉に買い言葉」と言いますが、子供の言動に対して、つい怒ったり、むかついたりしてしまい、子供に攻撃的な態度で接しがちです。「怒り」や「攻撃的な態度」というのは、信頼関係を壊す大きな要因となります。

 高慢な態度というのは、自分が優れているという自己満足的な姿勢から生まれてきます。「自分が正しいことを相手に示したい」、「自分の意見を通したい」という気持ちがあるのです。そのような気持ちを持っていたら、信頼関係は築けないでしょう。ところが親は、子供に対して自分が正しい、自分の言うことを聞くべきだと思っているのです。

 また、怒りというのは、自分自身への嫌悪感の裏返しの場合もあるのです。穏やかな心でいるならば、それほど感情的になることはないはずです。怒りの気持ちを持っているので、相手のミスや弱点を指摘してしまうのです。

 マイナス的な感情との付き合い方を考えてみましょう。

 他人の行動に振り回されない自分をつくるのです。自分が嫌な気持ちになるかどうかは、自分の選択なのです。

 「許せない」と感じている自分を自覚し、そういう自分と向き合うようにしてみてください。心の奥にある良心の声が、次第に感じられるようになってくるでしょう。そして相手を許せるようになっていきます。焦らずに向き合ってみてください。

 親は、子供に、まず自分のことを理解してほしいと要求していることが多いのです。そして、親の言うことをよく聞いてくれる子供であってほしいと要求しているのです。

 もう一度、自分の姿勢を見つめ直しましょう。「理解してから、理解される」のが原則です。そう思っているのか、それとも「まず自分を理解してほしい」と思っているのか、しっかりと整理してみましょう。

 親の感想を紹介します。

親の感想:「子供が正しい方向へ行けるように、迷い道に入ってしまわないようにと思って、自分の人生の経験で得たことを中心に、『このように行くんだよ』と教えてきました。しかし、子供に対してそのようにしてきたことが間違いであったことに気付かされました。子供によく『お母さん、否定ばかりしないで』と言われますが、『そんな気持ち、全然ないよ』と言っても、不機嫌になるだけで、気持ちが通じ合えないことを悩んできました。これからは、子供のことをよく聞いてあげ、気持ちを分かってあげられるように努力していきます」(続く)

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 次回は、「子供の話を聞く」をお届けします。


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