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通いはじめる親子の心 10
一時停止ボタン

 アプリで読む光言社書籍シリーズ第6弾、『通いはじめる親子の心〜子供の気持ちに「共感」する』を毎週火曜日配信(予定)でお届けしています。

多田 聰夫・著

(光言社・刊『通いはじめる親子の心〜子供の気持ちに「共感」する』より)

第二章 親の愛情が届いていない

一時停止ボタン
 私たちは、なんと感情的になりやすいことでしょうか。感情の勢いに流されて、心にもないことを言ってしまい、後悔する。言われた言葉に反発し、怒りを込めて反論する。そんなことを、何度も経験したことがあるのではないでしょうか。

 そして、「あんなこと、言うんじゃなかった」、「あの時、ちょっと立ち止まって考えていれば、あんなことにはならなかったのに」と思うのです。些細(ささい)なことで、言い返したり、反発したりして、とんでもない関係へと進んでいってしまうことがあります。

 子供の気持ちを共感したいと思っていたとしても、感情的になると、一度に吹き飛んでしまいます。そのようなことが続くと、自分自身に対しても、自信がなくなってしまいます。

 そんなときに、「ちょっと待てよ」と、「一時停止ボタン」を押すのです。そうすることで、自分に湧き上がる感情と、それに対する反応や行動の間で立ち止まり、自分の反応を選択できるようになるのです。子供の様子を見てみようと待つ、子供の気持ちを聞いてみる、子供に言葉をかけてみるなど、自分の反応や行動を選択していけるようになるのです。

 ここで大切なのは、子供の態度に対して感情的になって、その感情のままに行動しては良くないことを「自覚」できていることです。

 「自覚」するというのは、自分自身の考え方、思いや望みを客観的に把握することです。このような「自覚」する姿勢がなければ、子供の心を真に理解し、子供を信頼し愛することができず、親自身が変わることも難しいのです。

 人間関係の中で感情的になってしまったとき、「一時停止ボタン」を押すことにより、感情的行為が抑えられるようになります。例えば、感情的になったまま夫婦げんかをして子供たちに嫌な思いをさせてしまうところを、「一時停止ボタン」を押すことで、夫婦げんかをしなくても済むことができるわけです。夫婦げんかをして、感情的なまま行動することで子供に伝えていた悪習、良くない傾向を断ち切ることができるようになります。

 「一時停止ボタン」を押せるようになるための一つの方法を紹介します。「十まで数える」というものです。このとき、呼吸することだけに意識を集中するようにしてください。他のことは考えず、「十まで数える」ことだけに集中してください。

 大きく息を吸い込んだのちにゆっくりと吐き、吐き終わったら、心の中で「一つ」と数えます。再び息を大きく吸い込み、ゆっくりと吐きます。そして、心の中で「二つ」と数えます。このようにして「十」まで数えます。一度、挑戦してみてください。

 もし七まで数えて、「あと三回やればいいのだな」などと考えたら、意識が集中できていないことになります。大抵、三つか四つまで数えれば、別の考えにはまり込んでしまいます。

 他のことを何も考えずに「十まで数える」ことができれば、「一時停止ボタン」を押せたことになります。自分の置かれた状況から一歩引いて、自分自身を見つめることができたことになります。つまり、自分自身の行動を意識することができたのです。

 子供が反抗的であったり、ふてくされたり、あるいは無視するような態度を見せるとき、親にはいろいろな感情が湧き上がってきます。そんなときには、この「一時停止ボタン」を押すようにしてください。子供の言葉や態度に対してカッとなって、一言、口にする前に、大きく深呼吸してみるのです。大きく息を吸って、ゆっくりと息を吐き切るのです。そうすると、感情の爆発にブレーキをかけることができるでしょう。(続く)

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 次回は、「子供の立場に立ってみる」をお届けします。


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