世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

米韓首脳会談、両者の会談は2分間?

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 4月8日から14日を振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 安倍首相、離任の韓国大使に徴用工などで懸念を伝える(8日)。米、イラン革命防衛隊をテロ組織指定へ(8日)。防衛省、不明のF35Aは墜落と断定(9日)。河野外相、米国に「イスラエルのゴラン高原併合、認めない」と伝達(10日)。米韓首脳会談(11日)。北朝鮮、最高人民会議を開催。金正恩党委員長を国務委員長に再任(11日)、などです。

 今回は、米韓首脳会談について説明します。
 4月11日、米ホワイトハウスで行われました。どのような会談であったのかを端的に示しているのが会談時間です。全体で29分間。ところがそのほとんどどはトランプ大統領が記者団とのやり取りに費し、両者の実質的な会談は約2分間でした。

 文在寅大統領は、北朝鮮の非核化行動を促すためには、制裁の段階的な緩和が必要であることを話しました。
 しかしトランプ大統領は、北朝鮮の完全な非核化と制裁解除などを一括合意する「大きな取引」を明言、全くかみ合いませんでした。
 両首脳の「溝」は、米朝間の「溝」と全く同じなのです。文政権は、米朝の仲介役ではなく、北朝鮮の代弁者となっているというのが現状です。

 4月11日は、文氏にとって実は非常に重要な一日でした。
 日本統治下の1919年同日、中国上海で独立運動家らによる「大韓民国臨時政府」が樹立されました。この日は100周年に当たるのです。文氏はこの日を「建国の日」とみなし、大々的にソウルで記念行事を行う予定だったのです。
 ところがスケジュール調整がうまくいかず、米韓首脳会談のため、10日、米国に向けて出発せざるを得なくなったのです。

 背景にあるのは、4回目の南北首脳会談に向けての準備です。
 実は今、日米間で4月末に日米首脳会談を実現するための調整を行っています。その前に米韓で首脳会談を行わなければ、米朝の仲介役を果たせないと考えたのでしょう。しかし、実現はしたものの、その結果は惨めなものとなってしまいました。

 4月11日はまた、北朝鮮の最高人民会議開催の日でもありました。
 翌12日に金正恩委員長が施政演説を行い、米朝ハノイ会談後初めて米国との関係について触れ、「最近、米国が第3回朝米(米朝)首脳会談を考え、対話を通じた問題解決を強く示唆しているが、敵視政策の撤回には依然として背を向けており、われわれを圧迫すれば屈服させられると誤断している」と米国を批判。「経済制裁に執着している」とし、「われわれに対する耐え難い挑戦なので傍観できず、粉砕しなければならない」と訴えたのです。

 一方で、トランプ米大統領とは「立派な関係を維持している」と語り、「今年末までは米国の勇断を待つ」として、依然「トランプ頼み」であることを明らかにしました。

 韓国は米朝の仲介役ではなく、日米と歩調を合わせる立場に立つべきです。