世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

北、米朝交渉担当者を問責

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は4月1日から7日を振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 新元号「令和」、菅官房長官が発表(1日)。世界の飢餓、1.1億人、世界食糧計画が発表(2日)。G7外相会合(2日間)、米ポンペオ国務長官出席せず(5日)。沖縄県の辺野古埋め立て承認撤回取り消し、国交相が裁決(5日)。北朝鮮、米朝会談決裂で交渉担当者問責判明(5日)、などです。

 今回は北朝鮮の動向を説明します。韓国の朝鮮日報(ウェブ日本版)は4月6日、米朝会談の事前交渉を担当した金赫哲(キム・ヒョクチョル)国務委員会対米特別代表と金聖恵(キム・ソンヘ)統一戦線部統一策略室長が5日、北朝鮮で問責されていたことが分かったと報じました。
 
 首脳会談の「決裂」を受けて、北朝鮮側担当者が何らかの「処分」を受けると思われていました。朝鮮日報によれば、米朝交渉に詳しい外交消息筋は「北朝鮮はハノイ会談を振り返ったのち、交渉実務者の問責を実施した。ハノイで金正恩委員長の到着前まで米国側と実務交渉を行った金赫哲特別代表と金聖恵室長、『1号通訳』(金委員長の通訳)としてデビューしたシン・ヘヨン通訳官などを問責した」と語ったというのです。

 北朝鮮の対米交渉担当部署に昨秋、変化がありました。それまでは朝鮮外務省の李容浩(リ・ヨンホ)外相や崔善姫(チェ・ソニ)外務次官が担当していたのですが、金正恩朝鮮労働党委員長直属の国務委員会や党統一戦線部の外郭機関・朝鮮アジア太平洋平和委員会、などに移したのです。

 金赫哲氏は、外国語大フランス語課を卒業し、外務省で外交戦略を立案する第9局(現政策局)を担当しており、2005年の6カ国協議では北朝鮮代表の演説文も作成したとされる人物でした。30代で副局長に昇進し、2014年にはスペイン大使になりましたが、北朝鮮の核実験を受けて2017年に追放されていたのです。
 
 金赫哲氏と金聖恵室長は今年1月、金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長兼統一戦線部長の訪米に同行。2月には平壌とハノイでスティーブン・ビーガン米国務省北朝鮮担当特別代表らと会い、首脳会談直前まで議題を調整しました。金正恩委員長がハノイに到着した直後には、同委員長の宿泊施設で交渉状況を報告しています。
 
 通訳官のシン・ヘヨン氏に関して朝鮮日報は、会談で合意を見なかったと宣言したトランプ大統領に、金委員長は「もう一つ話すことがある」と言ったのですが、シン通訳官が通訳できていなかったときにトランプ氏が席を立ってしまい、それが通訳官としての決定的なミスとされている、と報じています。

 しかし、事前交渉の最高責任者は金英哲党副委員長兼統一戦線部長です。問責を逃れることができない立場です。
 事実上のナンバー2である金氏の動向に注目しておく必要があります。