夫婦愛を育む 52
おじちゃんの愛

ナビゲーター:橘 幸世

 年末年始に娘が帰省した際、話の流れから子供たちが小さかった頃のエピソードを思い出しました。私は2回とも里帰り出産したのですが、当時まだ独身だった実家の兄は、その間に自分の甥(おい)と姪(めい)をすっかり愛(め)でるようになりました。

 娘が3歳くらいだったでしょうか。お正月を実家で過ごしていた時、退屈したのでしょう(田舎で周りは何もありません)、娘が「たこ焼きが食べたい」と言い出しました。

 当時、正月三が日は近所のお店はどこも閉まっています。母が「どこも閉まってるよ」と困ったように言います。私は娘の気まぐれ的お願いを聞くつもりなど毛頭ありません。「今日は無理だよ」と諦めさせようとします。

 すると兄が、「高速のサービスエリアならあるかもしれない」と言うのです。たこ焼きを食べるために、わざわざ車を走らせて高速に乗る!? 「いいよ、そんなわざわざ」とあきれて断る私の横で、娘は「おじちゃん、お願い~」とおじちゃんのお気に入りのポーズを取ります(3歳にして頼み方を心得ています!)。兄は目を細めて、「じゃあ、行くぞ」。結局、母と兄と私たち家族4人、サービスエリアで“ごく普通の”たこ焼きを食べて帰ってきました。

 母が子供たちに屋台のおもちゃを買ってあげた時、息子はそれを振り回して近くにあった石にぶつけ、あっという間に折ってしまったことがありました。「わ~ん」と泣く息子に、母は「ほらほら」とすぐ新しいのを買い与えます。それを見て「甘いな~」とあきれていた兄でしたが・・・・・・。いい勝負です。

 親がすれば「甘やかし過ぎだ」と非難されそうなことも、せいぜい苦笑程度で済まされるのは、祖父母、おじ・おばならではの特権かもしれません。
 しつけの責任がないからと言えばそれまでかもしれませんが、兄のように、何も考えず、ただただ与えてうれしい、そんな境地も至福の一つだろうなと思います。

 一方、当の娘は当時のことを覚えているはずもなく、かつてのおねだり上手はどこへやら、気を使い遠慮するタイプになっています。こんな事があったんだよ、と教えられる中で、自分がいろいろな愛に包まれて育ってきたことを改めて振り返ってみたら、少し力を抜いて自然体で生きるのが上手になるかもしれません。
 皆、いろいろな人の愛を受けたからこそ、生きてこれているのですから。