夫婦愛を育む 53
「ありがとう」も国それぞれ

ナビゲーター:橘 幸世

 婦人向け講座で、実践項目の一つとして「夫にありがとうをたくさん言いましょう」とお話ししていますが、それを聞いたある韓国婦人がこんなことを教えてくれました。

 「韓国では、家族間でありがとうは言いません。かえって他人行儀になってしまいます。お互いのためにいろいろするのは家族だから当然、という感覚です」。

 これは日本人のご主人からすれば、物足りなさ、不満を感じるかもしれません。行動の背景にある、お互いの文化の違いを知らなければ、ぶつかってしまいます。知れば、歩み寄りができますね。

 東南アジアにも同様の文化の国があり、その国からの留学生と日本のホストファミリーとの間で「ありがとう」を巡って誤解が生じたことを、月刊誌『ハーストーリー(Her Story)』の記事で読んだことがあります。

 一方、アメリカにホームステイした日本人学生は、ホストファミリーから「お礼を言わない」と苦言を呈されたそうです。
 彼女は事あるごとに「Thank you」と言っていたので、最初はホストファミリーが言ってる意味が分かりませんでした。あちらでは、単なる「ありがとう」では感謝の気持ちが伝わらず、「Thank you for ~(~してくれてありがとう)」と具体的に理由まで言うのがスタンダードだそうです(同誌記事より)。

 「ありがとう」一つを取っても、国によって文化によって随分違うものです。

 先月(2019年1月12日)聖和された朴普熙先生は、真のお父様(文鮮明先生)の通訳を長年務めてこられましたが、こんなエピソードを聞いたことがあります。

 アメリカ教会の初期の頃、お父様がアメリカのメンバーを強い言葉で叱咤(しった)された時、朴先生はその言葉を「My dear children」と訳されました。

 言語・文化の違い、そしてお父様と接した時間の短さから、アメリカのメンバーには、厳しい言葉の背後にある思いが直訳では伝わらないと判断し、「親愛なるわが子たちよ」と訳されたのです。

 間に立つ人が、それぞれのことを十分理解していなければ、良き仲保者にはなれません。私たちはさまざまな人間関係の中で、間に立つこともあるでしょう。性別による違い、年代による違い、育った環境、個性、立場などを考慮に入れて、丁寧に接していくことが肝要かと思います。

 母として、父と子供たちの良き仲保者になろうとすれば、自分の尺度だけで双方を見るわけにはいきませんし、適切な伝え方、表し方を見つけなければなりません。

 間に立つ者次第で、和とも不和ともなる。
 自分の器を大きくしていかなければ…と思います。