夫婦愛を育む 50
「夫も家事育児を」と言うけれど

ナビゲーター:橘 幸世

 男女平等の名の下、女性の社会進出とともに、夫も家事育児を積極的に担うべきだという風潮が主流となっています。

 テレビCMで描かれるのは、料理をしたり子供の送り迎えをする“理想的”夫たち。「イクメン」「イクボス」などの言葉も定着し、もはやそれがスタンダードの感すらあります。
 そんな中で生きる若き夫たちは、一生懸命家でも頑張っています。

 先日地元紙に、一人の夫のつぶやきが載っていました。

 初めての子育てで妻を支えようと、子供が夜泣きをすれば抱っこして家の中を歩き回りあやします。生後数カ月のうちは良かったですが、父母の区別ができるようになると、接する時間の圧倒的に少ない父のあやしはもう功を奏さず、自分の腕の中でわが子はのけ反ってますます激しく泣くばかり。なすすべ無しと、母の腕に託すと赤子はたちまち落ち着きを取り戻し、乳を飲みながらスヤスヤと寝入ります。

 そんな時、彼は無力感にさいなまされます。夜泣きのたびに肩身の狭い思いをし、赤子をあやす妻を横目に、明日も仕事だからと布団をかぶります。実は半分「ふて寝」、と本音がつづられていました。そんな夫の思いを知れば、妻側は「私ばっかり大変」と一方的にぼやくわけにはいかないかもしれません。

 また、食器洗いは、男性にとって比較的協力しやすい家事かと思います。ところが、妻を喜ばせようと頑張って洗ったものの、彼女が喜ぶどころか、洗い方にダメ出しをしたり、流しの周りが水でビシャビシャだと怒ったりしたらどうでしょう? 彼はやる気をなくしてしまいます。もう二度と手伝わないぞ、と心の中で叫ぶ夫もいるでしょう。

 そうなれば、せっかくの努力も夫婦仲にマイナスの結果となってしまいます。女性の皆さんは、賢い妻となって、多少自分のやり方と違っていても、洗ってくれたこと自体に感謝して、笑顔でお礼を言いましょう。洗い残しがあれば、後で黙って自分で洗えばいいのです。水周りも拭いておけばいいのです。「洗ったら、流しの周りを拭いといてね」などと言うのはお勧めできません。結局ダメ出しになり、「洗ってくれてありがとう」と言ったとしても、もはやそれは彼の心に届きません。

 女性の中にも、家事が苦手な人、嫌いな人もいます。それでも努力する妻を夫が寛容に対するように、家事に協力しようとする夫の姿勢を受け止めましょう(「今どき当然だ」などと思わずに・・・)。

 支え合う、思いやるお互いの気持ち自体を大切にして、その中に喜びを見いだすよう、焦点を合わせましょう。