2026.03.03 17:00

シリーズ・「宗教」を読み解く 402
ユダヤ・キリスト教の歴史に見る選民の共同体㉑
神の独り子が見た共同体
ナビゲーター:石丸 志信
イスラエルの父祖アブラハムから始まり、その子イサク、孫のヤコブの3代をかけて据えられた選民の基、そこから生まれてくる「神の民」は血縁で結ばれるとともに、神の救いの御業(みわざ)を見たという共通体験を有する共同体として成長し、一つの国の土台を据えた。そこに誕生したイエスは、彼らの苦難の歴史を通して準備した救い主メシヤであった。
イエスは成長してイスラエルの民の前に立った時、あからさまに自らのことを明かすのではなく、ひそかにこのように語った。
「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。神が御子を世に遣わされたのは、世を裁くためではなく、御子(みこ)によって世が救われるためである」(ヨハネによる福音書 第3章16~17節、新共同訳)
そして御子を信じ、従うよう促す。
「悪を行う者は皆、光を憎み、その行いが明るみに出されるのを恐れて、光の方に来ないからである。しかし、真理を行う者は光の方に来る。その行いが神に導かれてなされたということが、明らかになるために」(同20~21節)
イエスは、目の前にいる者たちに語っている。彼の周りに集まってくるのは、彼に付き従う弟子のほか、癒やしと慰めを求める人々、彼に論争を仕掛ける律法学者たちであった。
それは、イエスが望む共同体には似つかわしくない。人類救済のために神の独り子、救い主なるかたを支え、共に神の大望を成し遂げるにはあまりも脆弱(ぜいじゃく)な群れだった。
そして彼の公生涯における活動範囲も、ガリラヤ地方を中心としたイスラエルの領域にとどまっている。
ところで、イエスの目にはどのような共同体、どのような世界が見えていたのだろうか。
イスラエルの父祖たちの伝統を継承し、2000年の歳月、神の鍛錬を受けて成長した群れは、ユダヤの地のみならず、東はかつての捕囚の地、ペルシャ地方から、地中海沿岸、ローマ帝国の版図にまで広がっていた。
彼らは各地の文化風習に同化してしまうことなく、ユダヤ人としてのアイデンティティーを保持しながら生活していた。
それぞれの地域で会堂(シナゴーグ)を中心に共同体が形成され、安息日を守り、律法(トーラー)のみ言を覚え実践する生活が営まれていく。
捕囚からの帰還後エルサレムに神殿が再建され、聖所で神殿祭儀が行われ、決められた祝祭には都詣(みやこもうで)がなされるようになったが、各地では会堂が分神殿の役割を担い、犠牲の供え物をささげる代わりに聖書のみ言を読み、砕かれた心を神に奉献する礼典が営まれるようになっていた。
どの地にあっても共通のみ言、共通の祈りを通して、国境を超えた世界的な民族共同体が形成されていた。
「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」(マルコによる福音書 第1章14節、新共同訳)
イエスがガリラヤ地方で声を上げた時、その声が一国を超えて広がる選民イスラエル共同体の隅々まで響き渡ることを期待していたのかもしれない。
★おすすめ関連動画★
ザ・インタビュー 第22回
【石丸志信・世界平和宗教連合会長に聞く(その1)「超宗教運動の30年を振り返って」】
ザ・インタビュー 第23回
【石丸志信・世界平和宗教連合会長に聞く(その2)「宗教者の対話を促進する『超宗教フォーラム』」】
ザ・インタビュー 第24回
【石丸志信・世界平和宗教連合会長に聞く(その3)「宗教者の役割と祈りの重要性」】
ザ・インタビュー 第25回
【石丸志信・世界平和宗教連合会長に聞く(その4)「超宗教平和運動への召命」】
---
U-ONE TVの動画を見るにはU-ONE TVアプリが必要です!
無料ですので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
ダウンロードはコチラから