愛の知恵袋 47
夫婦が愛し合える、最後の一点

(APTF『真の家庭』157号[11月]より)

松本雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

 2009年の1年間に結婚したカップルは70万7734組。同じ1年間に離婚したカップルは25万3353組で、人数にすれば50万6706人。今、日本で1年間に生まれる新生児は109万人前後であることを考えてみると、この離婚人数は大変な数です。中でも結婚して5年以内の若いカップルの離婚が一番多く、実に全体の3分の1を超えています。

 誰でも結婚したときには夢があったはずです。”仲の良い夫婦、やがて可愛い子供たち、楽しい一家団欒、穏やかな老後の生活…”そんな夢を持って出発したはずの二人が、なぜ、こんなにも破綻していくのでしょうか。

夫婦破綻の直接的な原因

 すべての結果には原因があります。では、結婚生活が破綻する原因は何でしょうか? 多くの事例から総合すると、夫婦関係破綻の直接的な理由には、次のようなことがあげられます。

 性格の不一致、不倫、暴力、精神的虐待、性生活の不満、異常性格、家族や親戚との折り合い、借金等の金銭トラブル、アルコール依存症、ギャンブル依存症、浪費癖・買い物依存症…等々。

 以上のような理由が、離婚の調停や裁判の時にあげられて来ます。しかし、これらは離婚に踏み切った直接的な原因ではありますが、実は第二次的な原因であると私は考えています。いきなり最初からこのような行動に走る夫や妻は少ないからです。なぜ、そのような事態に至ってしまったのか、その前段階に必ず日常的問題があり、それが夫婦関係を悪化させていく原因だと考えられます。

夫婦破綻の間接的な原因

 では、夫婦関係を崩壊させる間接的な要因、最初の原因とはどんなことでしょうか。それはお互いの伴侶に対する不満の中に見いだすことができます。

・夫に対する妻の不満
 思いやりがない、話を聞いてくれない、頼んだことをやってくれない、大声で怒る、妻をけなす、経済力がない、頼り甲斐がない、子育てに協力的でない、家事を手伝わない、妻の両親を大切にしない、隠し事をする……、要するに、尊敬できない!

・妻に対する夫の不満
 細かいことに口うるさい、片付けができない、言葉がきつい、夫の自尊心を傷つける、女らしさがない、愛嬌がない、優しさがない、従順でない、性生活に無関心、夫の両親を大切にしない、家にいても癒されない……、要するに、かわいくない!

夫の中に必要な”尊敬できる一点”

 女性から見ると、結婚してから、様々な夫の欠点が見えてくるのですが、子供を持てば、簡単に別れようとは思いません。まじめな女性であれば、大概は忍耐に忍耐を重ねて、夫とうまくやっていこうと努力をします。しかし、「もう、これ以上はがまんできない」と、プツンと糸が切れる限界点。それは、どんなにいろいろと不満はあっても、夫の中に何か一点でもいいから、心から「尊敬できるところ」があれば、まだやっていけるというのです。しかし、それが一点も見えなくなったら、夫に対する情の糸は切れてしまうというのです。

 従って、夫たる者、肝に銘じて努力をしましょう。何か一つでも、妻に心から尊敬されるような生活を。「えっ、なに、一つくらいなら問題ないって?」。とんでもない、お父さん、簡単ではありませんよう〜。何せ、世界で一番採点の厳しい試験官は、妻なんですから。

妻の中に必要な”かわいさの一点”

 どのような形で結婚したにせよ、夫という者はそれなりに妻や子供を愛し、「家族の幸せのためには苦労をいとわない」という気持ちはあるものです。しかし、一緒に暮らしてみると、「こんなはずじゃなかった…」というようなことが次から次に起こってきて、誰もいないところで絶叫したくなるようなことも少なくないでしょう。

 それでも、大概の夫は妻のご機嫌を損ねないように気を遣い、愛そうと努力をするものです。それが限界に達して、「もう結構だ、疲れた!」と情の糸がプツンと切れる限界点。それは、気にいらないことはたくさんあっても、妻の中に何か一点でも心から「かわいいと感じるところ」があれば、まだ女性として愛せるのですが、それがひとつも見いだせなくなったときには、妻に対する愛情は冷めてしまうというのです。

 従って、妻たる者、しっかり覚えておきましょう。夫から愛されるために必要な最低限の要素というのは、”頭脳明晰、容姿端麗、仕事てきぱき、子育て熱心”というような立派な側面よりも、「かわいい」という要素なのです。