2025.11.25 17:00

シリーズ・「宗教」を読み解く 389
ユダヤ・キリスト教の歴史に見る選民の共同体⑧
新しいイスラエル共同体
ナビゲーター:石丸 志信
キリストを頭とする共同体は、使徒たちの指導によって一致を保つ努力が重ねられていった。
その統合のしるしとして彼らが公に宣言した使徒信条では、イエスは神の独り子、主キリスト(メシヤ)であるとの信仰を次のように言い表した。
「わたしは、そのひとり子、わたしたちの主、イエス・キリストを信じます。主は聖霊によってやどり、おとめマリヤから生まれ、ポンテオ・ピラトのもとで苦しみを受け、十字架につけられ、死んで葬られ、よみにくだり、三日目に死者のうちからよみがえり、天にのぼられました。そして全能の父である神の右に座しておられます。そこからこられて、生きている者と死んでいる者とをさばかれます」(プロテスタント口語文「讃美歌21 使徒信条B」)
使徒たちは公生涯の間イエスに付き従っていたものの、イエスの真実の姿を知らず、そのかたが何者であるかを悟ることができなかった。
しかしイエスの復活の後、聖霊によって諭され彼こそ神の独り子・主キリストであることを確信した。
確かにイエスは母マリヤを通して人の子として生まれ、その家庭で育ち、時を得てイスラエルの民を集め「神の国とその義」を求めて歩まれた。
「わたしを見た者は、父を見たのだ」(ヨハネによる福音書 第14章9節、新共同訳)と言われたそのかたは、創造主・天の父と一体であられたと理解した。
その理解に達するまでに、彼らはイエスの死と復活の出来事を目撃し、許された後に「神の子」に生まれ変わらせられた。そこで立ち上がった彼らは、死をも恐れず福音宣教に邁進することができた。
彼らが体験した一連の出来事を、イスラエル民族の体験に照らして「新しい過ぎ越し」と捉えた。
「過ぎ越し」はイスラエル民族の持つ共通の神による救済体験だ。
かつてエジプトの奴隷であった民族が、モーセを通して三大奇跡と十災禍を経て解放される。第10番目の災いがエジプト全土に下り、初子がことごとく打たれた時、鴨居に小羊の血を塗ったイスラエル民族の家には災いが過ぎ越した。朝が明け、パロは彼らをエジプトから出ていくように命じた。
イスラエル民族はこの出来事を安息日のたびに思い起こし、年に一度、春の頃には大々的に「過ぎ越し祭(ペサハ)」を祝ってきた。
それにより、いつの時代の民も、かつての出エジプト体験をわが身の体験として記憶することができた。それが選民のアイデンティティーの中軸となっていった。
イエス・キリストを通して罪の世から解放され神の子に生まれ変わるという体験は、キリスト教徒に共通する神の救済体験であり、毎週日曜日の礼拝と年に一度の復活祭の典礼を通して時代を超えたキリスト教徒の共同体のアイデンティティーの中軸となった。
このように、一つの共同体としての神体験があったからこそ、時代を超えて伝統を継承することができたのだろう。
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