世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

中国、対日圧力強化
日本の渡航に注意喚起

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、1110日から16日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 米中両国、互いに関税引き下げへ(1110日)。米・シリア首脳会談開催(10日)。ロシア、小泉悠氏ら新たに30人の入国禁止発表(11日)。中国外務省、日本への渡航を控えるよう国民に注意喚起(14日)。スペイン国王が中国を公式訪問、習近平氏と会談(12日)。米政府機関の一部閉鎖を解消(12日)。高市早苗首相、フィジーのランブカ首相と官邸で会談(13日)。米相互関税から農産物除外、大統領令に署名(14日)。中国、海警(海警局)が尖閣諸島でパトロール活動実施を発表(16日)、などです。

 中国外務省は1114日、日本への渡航を控えるように国民に注意喚起を行いました。さらに海警は16日、尖閣諸島でパトロール活動を実施したと発表しました。
 さらに中国教育省は16日、日本の治安が悪化しているとして日本留学を慎重に検討するよう国民に注意喚起を行い、すでに滞在中の国民には「細心の注意を求めた」と発表しました。日本に対する圧力を強めています。

 背景にあるのは高市早苗首相が、7日の予算委員会で、台湾を支配下に置くための中国・北京政府の行為として海上封鎖、偽情報、サイバー空間を利用したプロパガンダ(政治宣伝)など具体例を挙げた上で「戦艦を使って、武力行使も伴うものであれば、これはどう考えても『存立危機事態』になり得るケースだ」と発言したことです。

 中国の薛剣・駐大阪総領事は8日、自身のXに「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇(ちゅうちょ)もなく切ってやるしかない。覚悟ができているのか」と投稿。その内容が不適切であるとして日本政府は強く反発して抗議したのです。

 しかし呉江浩・駐日大使は10日、Xで「台湾は中国の不可分の一部だ。台湾問題をどう解決するかは中国人自身の課題。『台湾有事は日本有事』をあおり、日本を中国分断の戦車に縛り付けるのであれば、最終的には引き返せない誤った道を歩むだけだ」と投稿したのです。

 この問題の本質を説明してみます。
 中国の側の主張は「台湾は中国の不可分の領土」であるという「一つの中国」原則なのです。

  呉江浩・駐日大使は520日、中国大使館主催の「台湾問題と日中関係」座談会で、「一つの中国」という原則は国連「2758決議」で確認された国際関係の基本原則と国際社会の普遍的共通認識であり、全ての加盟国はそれを守る義務があると語りました。
 しかしこれは、中国の「一方的主張」に過ぎないということを知る必要があります。

 2758決議とは、19711025日に開催された第26回国連総会で採択されたものであり、「中華人民共和国の一切の権利を回復し、中華人民共和国の代表が国連における中国の唯一の合法的な代表であることを承認する」というものです。

 この決議は非常にあいまいで粗雑であり、中華人民共和国の代表権を処理しただけで、中華民国と国連の間の問題を処理していませんし、台湾にも、台湾の政治的地位にも言及していないのです。当然、中国にとっては不満でした。

 「一つの中国」原則は中国側の主張です。あえて言えば、中国側の主張に過ぎないのです。
 中国は、法律戦で以下の3点を確立しようとしています。

1)中華人民共和国は中国の唯一の合法的政府であること

2)中国は2758決議を根拠に中華民国の一切を継承し、台湾を中国の一部とすること

3)中国は国連とその関連機関に中華民国の「国連復帰」、または台湾の「国連加盟」についての申請案を受け入れないようにすること

 中国は法律戦を通じて、台湾問題は国連憲章第二条で規定される「国内管轄圏内にある事項」に該当する。第二条では国連憲章のいかなる規定も「いずれかの国の国内管轄圏内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではない」と定めている。よって、内政干渉は認められないとの主張を定着させようとしているのです。

 中国が将来もし、台湾の全ての問題を処理する合法性を取得することになれば、そこには「武力による台湾問題の解決」も含まれることとなります。中国が最も期待していることです。

 中国の「一つの中国」原則について、米国は中国の主張内容を「認識」していますが、承認はしていません。
 日本は、中国側の主張を「理解し尊重」していますが、承認はしていないというのがこれまでの政府見解です。

 高市氏の国会答弁撤回は、あってはならないことなのです。今が正念場です。



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