2025.11.11 17:00

世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
ニューヨーク市長選で急進左派・マムダニ氏が当選
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、11月3日から9日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
高市首相、拉致国民大集会に参加(11月3日)。北朝鮮、金永南(キム・ヨンナム)前最高人民会議常任委員長が死去(3日)。中露、エネルギー分野での協力推進で一致(4日)。ニューヨーク市長に急進左派のゾーラン・マムダニ氏が当選(4日)。中国、「福建」が就航、空母三隻体制に(5日)。高市首相、台湾有事で存立危機事態に当たる可能性に言及(7日)、などです。
米ニューヨーク市長選と二つの州知事選の投開票が11月4日に行われました。
第2次トランプ政権下での初の大型選挙であり、その結果はトランプ大統領と与党・共和党に対する有権者の初期評価と見られていました。
最大都市ニューヨーク市長選の結果は、民主党候補のニューヨーク州下院議員、ゾーラン・マムダニ氏(34)が勝利。南部バージニア州、東部ニュージャージー両州の知事選でも民主党の新人女性候補が相次いで勝利するという結果となりました。
来年11月3日の中間選挙まで約1年。野党民主党が全勝となり、巻き返しへの弾みとなるのではないかといわれています。
従来から民主党が強い地域とはいえ、予想を上回る結果となり、この勢いを維持できるかどうかが民主党にとって課題です。一方、トランプ氏と共和党にとっては痛手となりました。
マムダニ氏は4日の勝利集会で、「私は完璧な市長候補からは程遠い。若く、イスラム教徒で民主社会主義者だ」「もはやニューヨークはイスラム嫌悪をあおって選挙で勝てる街ではない」と支持者に語りました。
マムダニ氏はアフリカ東部ウガンダ生まれ、7歳でニューヨークに移住。2018年に米国籍を取得しています。両親はインド系で、父親は米名門コロンビア大学教授で、母親は著名な映画監督です。
米ボウディン大学卒業後、ラップ歌手や低所得者層の住宅立ち退きを防ぐ相談員などを経て、21年から州下院議員を務めていました。
市長選に名乗りを上げた1年前は無名でしたが、巧みな弁舌やSNSを活用した選挙戦術で知名度が急上昇し、6月の民主党大会で選出されたのです。
政策は急進左派のものです。移民に寛容で、性的少数者の権利擁護も強調。巨額の生活支援策の財源を大企業や高所得者への課税強化で賄おうとしています。
しかしウォール街関係者が反発し、富裕層が市外に流出すると見る向きもあり、マムダニ氏の公約は「極端で実現不可能」だとする批判の声も多いのです。
マムダニ氏はトランプ氏との明確な対決姿勢を打ち出しています。
4日、「トランプに裏切られた国民に彼を打ち負かす方法を示せるとすれば、彼の故郷であるニューヨーク以外にない」と語り、州兵派遣や移民取り締まり強化を示唆するトランプ氏に対して、「われわれの誰かに手を出すなら全員を敵に回すことになる」とまで明言しました。
また、「ニューヨークはこれからも移民の街だ。移民が築き、移民により成長し、そして今夜、移民に率いられる街になった」「トランプ氏のような億万長者による税金逃れや、税制優遇の悪評を許してきた『腐敗の文化』を終わらせる」と鋭く批判しています。
しかし野党・民主党は、これで党勢回復の足掛かりをつかんだとはいえません。その理由は、ニューヨーク市長選で勢いを示した急進左派と主流派の溝がさらに深まったという難題に直面することになるからです。
民主社会主義を自認し、富裕層への課税強化などを掲げるマムダニ氏が新たな「党の顔」といして台頭する中、富裕層やウォール街の利益も代弁する民主党主流派との確執は避けられません。
民主党の主流派の重鎮・シューマー上院院内総務(ニューヨーク州選出)は、市長選で最後までマムダニ氏支持を明言しませんでした。
米国では今、社会主義的政策への忌避感が広がっているのです。
★おすすめ関連動画★
国際勝共連合 街頭演説
「激化する諜報戦~スパイ罪なき日本が世界の混乱要因に」
ザ・インタビュー 第29回
【渡邊芳雄・国際勝共連合常任顧問に聞く(その1)「『勝共』~神を否定する共産主義に打ち勝つために】
ザ・インタビュー 第30回
【渡邊芳雄・国際勝共連合常任顧問に聞く(その2)「神と共に生きる共同体理想の実現を目指して」】
ザ・インタビュー 第31回
【渡邊芳雄・国際勝共連合常任顧問に聞く(その3)「神は私と共に生きて今ここにいらっしゃる」】
---
U-ONE TVの動画を見るにはU-ONE TVアプリが必要です!
無料ですので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
ダウンロードはコチラから