2025.11.04 17:00

世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
米中首脳会談、「軍配」は中国に?
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、10月27日から11月2日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
天皇陛下、トランプ大統領と会見(10月27日)。日米首脳会談を元赤坂の迎賓館で開催(28日)。山上哲也被告の裁判員裁判の初公判(28日)。トランプ氏、拉致被害者家族と面談(28日)。小泉防衛相、ヘグセス国防長官が初会合(29日)。米韓首脳会談、韓国の原子力潜水艦建造を承認(29日)。米中首脳会談、釜山の空軍施設内で開催(30日)。日韓首脳会談開催、シャトル外交の継続を確認(30日)。日中首脳会談、「戦略的互恵関係」の維持を確認(31日)。中韓首脳会談、北の非核化が議題に(11月1日)、などです。
米中首脳会談が10月30日、釜山の韓国空軍施設内で約1時間40分にわたって行われました。極めて重要な会談でした。
以下にその理由を説明します。
会談内容のポイントを挙げておきます。
中国側が、レアアース輸出規制強化を1年間延期することになり、中国商務省が今後、1年ごとに延長するかどうかを協議するとのことです。また、米国産大豆など農産物の大量輸入を再開し、米国産エネルギーの購入も開始することになりました。
次に米国側です。合成麻薬フェンタニルの米国流入を理由に、中国に課してきた20%の追加関税を10%に引き下げることになりました。そして相手国で建造された船舶の追加湾岸使用料の徴収を1年間停止することが決まっています。
そしてトランプ氏が来年4月に訪中することも決まり、世界経済を混乱させる米中の貿易摩擦はひとまず緩和される方向になったのです。
トランプ氏は帰国する専用機の中で記者団に、「素晴らしい会談だった。彼は偉大な指導者だ」といつものように称賛。
ウクライナ情勢について「長い時間話し合った」と述べましたが、ロシア産の原油の中国輸入停止は「議題にならなかった」と語りました。
そして中国が「核心的利益中の利益」と位置付ける台湾問題も議論しなかったといいます。
要するに一番肝心な話は避けたということであり、衝突回避、問題の先送りの話し合いとなったということが分かります。
どちらかと言えば、中国側に「軍配」を挙げざるを得ない結果だったと見るべきです。
「極めて重要な会談だった」と述べたのはそのためです。
中国は、第1次トランプ政権時に「関税攻勢」で煮え湯を飲まされた苦い経験があります。
その後、米国の弱点を研究し尽くしたのです。そして、米国が中国に依存する物品を「武器化」するに至りました。
そこで第2次トランプ政権との「貿易戦争」で中国は、レアアース(希土類)の輸出規制を武器に米側を揺さぶり、トランプ氏のペースにはまることを防いで見せたのです。
レアアースは生産・採掘シェアで中国は世界の69%です。米国は11%です。また精製シェアで中国は91%を占めているのです。
中国は、ほぼ唯一米国に報復措置を取り続けながらもトランプ氏に税率を引き下げさせた最初の国となりました。米国が自国に依存しているものを「カード」にすることで、中国はトランプ関税の威力を削いで見せたのです。
この事実をトランプ氏はよく理解しています。それ故今回は引きながら、次の準備に入るのがこれからの一年になります。
よって今回の合意は、米中の「短期的な関与関係」の始まりに過ぎず、今後、あらゆる経済関係を断つ「デカプリング」に向かう可能性が出てきたのです。
中国の「自立自強」政策と米国、日本、豪州を中心としたレアアースなどの供給網(サプライチェーン)の構築はデカプリングへの歩みです。
トランプ氏は米国の現状、特に製造業の現状が中国と対峙できないほど弱体化していることを理解しています。それ故の「関税政策」を通じての米国の製造業復興のための苦渋の決断だったのです。
米中の「衝突」は避けられません。注意深く動向を見ていきたいと思います。
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