2025.11.14 22:00

続・夫婦愛を育む 28
良い加減の言葉
ナビゲーター:橘 幸世
Blessed Lifeの人気エッセイスト、橘幸世さんによるエッセー「続・夫婦愛を育む」をお届けします。
8月上旬、対物事故を起こしてしまいました。
車庫に入れようとして左折した瞬間、目の前に映る光景がいつもと違う! あっという間に向かいの家の壁に激突です。
起こったことが信じられないながら、すぐに「すみませ~ん」と声をかけて、出てきたご夫婦にお詫び。続けて110番。さらにはなじみの車屋さんに連絡しました。

幸い、ぶつけた家のご夫婦も良いかたたちで、若いお巡りさんたちにも優しく対応していただきました。
主人の母に報告しても「人相手でなくてよかった。私も昔は幾度かやったけん」と一言も責めません。
主人の妹も「それはショックでしたねぇ」と。
夜帰宅した主人に、開口一番「ごめんなさ~い」。何事かと構えた主人は、事情を聞いて、そのくらいの事かとむしろ安堵したようで、修理すれば済むことだから、と言ってくれました。
ありがたいことです。
とはいえ、誰も責めなくとも、起こったことに私自身が一番ショックです。日常的にしている車庫入れで起きたのですから。
車屋さんは「暑くてぼうっとしてたんじゃないですか?」
整形外科の先生は「白内障の術後間もない時に事故することはままあるよ。両目のバランスがうまく機能しなくて」(私は術後2カ月でした)。
あまりの一瞬の出来事でしたので、当の本人は「目に見えない何かの作用」を感じずにはいられません(何カ月か前、お隣さんがやはりご近所さんに対物事故を起こされています)。
念のため受診した整形外科でしたが、先生が診察中に二度三度「いけんかったねぇ」と言われました。
標準語では「それはいけませんでしたね」でしょうか。その言葉が妙に心地よかったのです。
良くないことがあった人に対してかける言葉、「大変でしたね」「生憎(あいにく)でしたね」「災難でしたね」など、いろいろありますが、かけられた側としては、重すぎず、過度に同情的でもなく、第三者だからでしょうか、適度な距離感があって、ちょうど良い加減に響きました。
十数年前に投薬治療を受けた期間、用事でやってきた車屋さんが「(体調は)どげですか?」(どうですか?)と聞いてくれた時も、気を使うことなく自然体な言葉がけが、心地よかったのを覚えています。
言葉をかける側になる時は、そんなふうにちょうど良い加減のフレーズが降りてくることを願います。
事故のショックから、自分の車以外を運転するのが不安で、修理の間の代車はお願いしませんでした。
自転車もないので、週末に主人に買い物に連れていってもらう以外は、歩くしかありません。
すると今まで車で行くのが当たり前だと思っていたショッピングセンターが、歩いてみると10分ほどで行けることを発見。最寄りのATMも徒歩圏内で、果ては整形外科も片道20分ほど歩いて行くようになりました。
歩くことが増えて、文字どおり、“けが”の功名?…とポジティブに。
橘幸世氏の書籍はこちらから
◆『夫婦愛を育む魔法の法則』