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シリーズ・「宗教」を読み解く 387
ユダヤ・キリスト教の歴史に見る選民の共同体⑥
キリストの体である共同体

ナビゲーター:石丸 志信

 使徒行伝に記された新しい共同体は、心一つに全てのものを分かち合う美しき家族として表現されている。
 ここに描かれた彼らの姿は、キリスト教の原点であり理想の共同体像を表している。これをモデルにしながら発展し、ローマ帝国の町々に、異邦世界に拡張していったものと思われる。

 しかしながら、人々の織り成す共同体であった故に、いつの時代にも理想の姿を描き出すことができたかというと、そういうわけにはいかなかった。
 復活したイエスとの出会いによって回心し、勢力的に宣教活動に専念しはじめたパウロは、コリントの共同体内に深刻な争いがあることを知り、手紙を書き送った。

 「さて、兄弟たち、わたしたちの主イエス・キリストの名によってあなたがたに勧告します。皆、勝手なことを言わず、仲たがいせず、心を一つにし思いを一つにして、固く結び合いなさい」(コリントの信徒への手紙一第110節、新共同訳)

 この手紙は、丁寧だが、深刻な面持ちで率直な勧告から始まる。
 互いに、自分はどの弟子に付くと主張し合って、党派を組んで対立を引き起こしている人々に対して、彼らが唯一の主イエス・キリストによって召された者たちであることを思い起させる。

 そして言い争う人間の愚かさに対して、神の知恵であり神の力であるキリストを延べ伝えることに心を向けさせ、それこそが共同体の成員たるものの務めであることを教え諭していく。

 使徒パウロは、共同体の和解と一致のために切実に訴えなければならなかった。
 共同体の成員一人一人がキリストと一つとなった体、聖霊の宿る神殿としてそれにふさわしい行いをするように勧告する。そして皆が一つとなって神の栄光を現わすことを願っている。
 パウロは強調する。

 「あなたがたはキリストの体であり、また、一人一人はその部分です」(同 第1227節、新共同訳)

 「体は一つでも、多くの部分から成り、体のすべての部分の数は多くても、体は一つであるように、キリストの場合も同様である。つまり、一つの霊によって、わたしたちは、ユダヤ人であろうとギリシア人であろうと、奴隷であろうと自由な身分の者であろうと、皆一つの体となるために洗礼(バプテスマ)を受け、皆一つの霊をのませてもらったのです」(同 第121213節、新共同訳)

 それ故、もっと大きな聖霊の賜物を追い求めていけという。
 それは三つ、信仰・希望・愛、わけても愛を追い求めよ、という。

 共同体の土台が据えられ、時を経て伝統となっていくまでの間、使徒たちは揺るぎない根を張り、幹を真っすぐに伸ばしていくため、力を尽くして指導に当たり、模範を示していった。



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