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シリーズ・「宗教」を読み解く 385
ユダヤ・キリスト教の歴史に見る選民の共同体④
12使徒が導く共同体

ナビゲーター:石丸 志信

 師と慕っていたイエスが無惨にも十字架刑で処せられる事件に直面し、絶望の淵に立たされた弟子たちの群れであったが、3日後に復活したイエスと再会する。

 深い悔い改めの後、赦(ゆる)され感謝のうちに立ち上がり、心一つに祈る中、弟子たちは聖霊によって生まれ変わる体験をした。
 いまだかつてない出来事に深い感動を覚えながら、イエスこそが選民たちが待ち望んできたメシヤであることを悟る。

 12使徒、120門徒らは、イエスと聖霊によって新しい生命を得たとの確信から、新たな共同体を形成した。
 この共同体は、イエスと聖霊が生んだ新たな選民共同体であり、その中心には常に神の独り子主イエス・キリストと聖霊が共にあった。
 キリストを頭とし弟子たちはその肢体だとする「一つの体」、大きな家族共同体となった。

 この共同体を地上でけん引したのはイエスが公生涯中に選び立てた12使徒たちだった。
 彼らには「汚れた霊に対する権能」(マタイによる福音書 第101節、新共同訳)が授けられた。
 イエスは最後の晩餐(ばんさん)の時、彼らにこう告げている。

 「あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ。あなたがたが出かけて行って実を結び、その実が残るようにと、また、わたしの名によって父に願うものは何でも与えられるようにと、わたしがあなたがたを任命したのである。互いに愛し合いなさい。これがわたしの命令である」(ヨハネによる福音書 第151617節、新共同訳)

 イエスから選ばれ特別な権能を授けられていた12使徒であったが、イエスの十字架の死後、イスカリオテのユダの死によって一人を欠いていた。その一人を補うべく、聖霊降臨の出来事が起こる前に11人の使徒と120門徒が共に集い、くじを引いた。

 選ばれたマティア(マッテヤ)が、使徒の権能を受け継ぐ者として12使徒に加えられた。
 新しい共同体の誕生の前には、イスラエルの12部族を象徴する12人の使徒がそろっていなければならなかったのだろう。そして生まれてきたこの共同体は、新しいイスラエルという自覚を持つことになる。

 彼らは、「使徒たちの教(おしえ)を守り、信徒の交わりをなし、共にパンをさき、祈(いのり)をしていた」(使徒行伝 第242節、口語訳)。
 使徒たちは、「多くのしるしと奇跡」(同 第243節、口語訳)を次々に行い、人々をこの群れに招き入れていった。

 やがて、12使徒が教えた事柄が短い定式にまとめられ、この共同体の信ずべき事柄が明記された「使徒信条」となった。
 その中には共同体の構成員が共通に持つ「神体験」が織り込まれており、彼らは体験に基づき信仰の核心内容を高らか宣言するようになる。
 それが共同体の紐帯(ちゅうたい)をなし、伝統の礎(いしずえ)となる。



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