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青少年事情と教育を考える 303
海外より低い「教員の社会的評価」

ナビゲーター:中田 孝誠

 教員が置かれている現状について調査した「OECD(経済協力開発機構)国際教員指導環境調査」の2024年報告書が、今月公表されました。
 この調査には55カ国・地域が参加し、日本では小学校で校長と教員合わせて約3550人、中学校で約3750人が回答しました。

 このうち再三問題になる長時間勤務について見ると、1週間の仕事時間は日本の小学校が52.1時間、中学校55.1時間で、2018年の前回調査より約4時間減少しました。参加国(平均で小学校40.4時間、中学校41.0時間)の中で最も長くなっています。

 また授業の時間は、日本の小学校が23.2時間、中学校が17.8時間に対して、平均は24.9時間と22.7時間で、日本が短いという結果でした。
 それでも、探究的な学習、ICT(情報通信技術)の活用をはじめ、前回より改善したと思われる点もいくつかあります。

 一方、こうした仕事の環境と共に、目を引く項目があります。

 一つは、学校内での教員同士の相互信頼感です。
 「教員は互いに信頼しあうことができる」は日本の小学校は85.0%、中学校76.9%で、前回より46ポイント低下し、参加国平均でも49ポイント下回りました。
 「教職員が指導や学習についての信念を共有している」「お互いに助け合う協力的な学校文化がある」も、小中学校とも前回を下回っています。

 もう一つは、教員に対する社会的評価です。
 「教員は児童生徒に高く評価されている」と感じている教員は、小学校62.0%(参加国平均79.6%)、中学校54.2%(同70.7%)です。
 同じく、「保護者に高く評価されている」は、小学校49.8%(同68.6%)、中学校45.0%(同65.4%)、「メディアに高く評価されている」は、小学校9.8%(同27.7%)、中学校9.2%(同19.8%)でした。

 教員に対する社会の評価(教員の力量だけでなく、尊敬の念など)は、時代と共に低下していることは感じていましたが、他国と比較して日本の低さが目立ちます。

 ただし、授業に喜びややりがいを感じているという回答は決して低くありません。
 「教えているときにしばしば幸せを感じる」「熱意をもって教えている」「教えていることにやりがいや満足」では、ほぼ9割の教員が「あてはまる」と答えています。
 他の職業と比べても仕事の満足度は高く、他国を大きく上回るという結果になっています。

 かつて「聖職」といわれるほど社会的評価が高かった教職。実際、日本の子供たちの高い学力を支えているのは、教育制度と共におのおのの教員の働きが大きいともいわれます。
 働く環境も含めて、教員に対する社会的評価を高めることも重要であると思います。