https://www.kogensha.jp/shop/detail.php?id=4335

青少年事情と教育を考える 302
デジタル教科書の正式採用

ナビゲーター:中田 孝誠

 先月24日、中央教育審議会の作業部会が開かれ、デジタル教科書を紙と同じ正式な教科書と位置付けることを盛り込んだ審議まとめを了承しました。

 文部科学省は、次の学習指導要領が実施される2030年度からの採用を見込んでいます。
 正式に教科書となることにより、二次元バーコードなどで提供される資料も含めて教科書検定の対象になります。

 これまでデジタル教科書はあくまで紙の教科書の代替として使用されていました。今後は教科書を従来の紙、デジタル、または紙とデジタルを組み合わせたハイブリッド形式の三つから、各教育委員会が選択する形になります。

 デジタル教科書によって、子供の特性や興味関心に合わせて、音声や動画を活用した幅広い学びができるようになります。他の子供と一緒に学ぶ際にも活用できるでしょう。
 こうしたことから「主体的・対話的で深い学び」につながると期待されています。

 一方、デジタル教材のマイナス面を指摘する声も少なくありません。
 海外、スウェーデンなどでは、子供の学力が低下したことから、紙の教科書に戻る動きがあります。

 日本でも、毎年実施される全国学力・学習状況調査で、授業以外でICT(情報通信技術)を使った時間が長いほど、試験の正答率が下がる傾向にあるとされています。
 深い学び(自分でじっくり考える)には向かないという指摘や、鉛筆でノートに書いてみるという動作が減ることを懸念する声もあります。

 文部科学省も、デジタル教科書の効果と影響について、数年前から実証研究を行っています。
 2030年に小学校に入学する年代は、生まれた時からデジタル機器に触れている子が大半かもしれません。ただ、そうであっても、デジタル教科書の長所と懸念される点は今後も検証する必要があります。

 また、すでに指摘されていることですが、紙とデジタルを使い分ける場合、教員の授業力で左右されることになります。
 この点でも、教員の採用や採用後の研修が大切になりそうです。