夫婦愛を育む 46
褒めてはいけない?

ナビゲーター:橘 幸世

 女性向けの夫婦講座で、「夫の男らしい点を称賛しましょう」とお話しすると、「褒めるのは良くないと聞いていますが?」という質問を受けることが時々あります。

 そのかたたちは、アドラー心理学関連の本を読まれたのかもしれません。そこでは、「褒める」という行為は上から目線だ、親子は平等・対等であるべき、「褒められることに依存してしまう」などの理由から、「褒める」のではなく、「ありがとう」と感謝を表したり、「うれしい」とこちらの感情を伝えましょうと説いています。

 夫婦関係と親子関係を一緒には語れませんし、統一原理では親子関係は縦的なものと説いていますので、少し異なります。
上から目線うんぬんについては言い方の問題もあるかと思います(「褒める」を辞書で調べると、対等もしくは下の立場の他者への行為とあります。「称賛」は上の立場の人にもできますね)。

 神様は天使を創造されましたが、彼らの役割の一つが、神に頌栄(しょうえい)をささげることです。神様にもそんな天使が必要だったように、私たち人間も、褒められたら単純にうれしいですし、やる気・力が出ます。
 心理学では、人間はさまざまな承認欲求を持っている、と言っています。

 大切なのは、“具体的に”褒めること。褒められた側は認められたと感じ、自己肯定感が育まれます。

 気を付けるべきは、実績や結果ばかりに焦点を当てないこと(努力や姿勢にも着目する)、他人と比較して褒めないこと。

 私たちは至る所で評価にさらされています。学校で、職場で、友人間で、そして多くは家庭でも。さらには自分自身の中でも。比較と評価を繰り返し、その都度、優越感を持ったり劣等感を感じたりしては、しんどいですね。

 あるドラマで、母親の思うように(いわゆる“普通に”)行動できず常に怒られている小学生が、「僕は駄目な子じゃない!」と叫ぶシーンがありました。幼いながらにこんな思いを抱えている子供たちがいることを思うと、胸が痛みます。

 また、こちらの思うように動いてほしくて、褒めないこと(コントロールの手段としないこと)。
 そして何よりも、うまくいかなかったり、失敗した時に、責めずに、「そういう時もあるよね」と受け止めること。
 自分をあるがままに受け入れてくれる相手には、良い所ばかりを見せようと無理はしません。安心して不足の部分も見せられます。褒められることに依存してしまうこともないでしょう。

 みんな、一生懸命生きています。さあ、褒め方を工夫して、自分も周りの人も、どんどん褒めましょう。