facts_3分で社会を読み解く 85

ニューヨークで行われた信教の自由に関する国際会議(5)
統一教会に反対する三つの勢力の共闘関係

ナビゲーター:魚谷 俊輔

 去る81日から3日にかけて、米国・ニューヨーク市において、「宗教の自由に対する現代の脅威の根本原因を評価する」をテーマとする、第3HJI平和と公共リーダーシップ会議が開催された(「HIJ」とはHJ平和・公共リーダーシップ国際大学院のことで、かつての統一神学大学院を指します)。

 この会議の日本に関するセッションで筆者は、「日本における反統一教会運動」と題するプレゼンを行った。
 今回もその内容の続きである。

 日本における統一教会反対運動は、大きく分けて三つの勢力からなっている。キリスト教牧師、反対父母の会、左翼勢力である。
 これら三つの勢力には、以下のような共闘関係があった。

 統一教会信者の親は、反対牧師に報酬を払って指導を仰ぐ。反対牧師は親に具体的な拉致監禁のやり方を指導し、親が子供を監禁したら、監禁現場を訪問するなどして信仰を棄(す)てるよう説得する。

 その信者が説得を受け入れて信仰を棄てれば、親の目的は達成されるが、それで終わりではない。元信者は反対牧師の活動に協力させられ、さらには左翼弁護士を紹介されて、統一教会を相手取った損害賠償請求訴訟を起こすよう説得される。

 こうして起こされた訴訟の代理人を左翼弁護士が務めることにより、彼らは弁護士として報酬を得ると同時に、統一教会の社会的評価にダメージを与えることができる。

 さらに、こうした訴訟の情報はマスコミを通して社会に宣伝され、親の不安をあおるために利用される。
 このように反対運動は、両親、牧師、弁護士、マスコミなどが、それぞれの立場と職能を生かして統一教会を窮地に追い込もうとする、プロ集団の複合体となっている。

 日本における統一教会の問題で特異な点の一つは、本来なら統一教会に対して客観的な研究を行い、中立的な発言をする宗教学者がいないということである。
 分かりやすく言えば、日本にはアイリーン・バーカー博士(イギリスの宗教社会学者)のように、実際に参与観察をして統一教会について研究し、正確な情報を発信する宗教学者がいないのである。

 日本の宗教学の歴史の中には一時期、信仰者に対する「体験的身体的理解」や、信仰者の内面を共感的に捉えようとする「内在的理解」などの手法がもてはやされた時代があった。

 これは研究主体とその対象という二分法を克服し、研究対象に認識主体が接近しようという動機に基づくものであり、両者ともに宗教的世界に対して極めて好意的な姿勢を示していた。

 ところが、こうした手法でオウム真理教の研究に関わった宗教学者たちが、オウムの中に潜む闇を見抜くことができなかったことが批判されるようになり、こうした研究手法は「宗教に対してあまりにも肯定的すぎる」と批判されて大きくつまずくこととなったのである。

 オウム事件が日本の新宗教研究に残したトラウマはあまりにも大きく、いまだにそこから立ち直っていないといっても過言ではない。


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