ほぼ5分で読める勝共理論 93
台湾有事①
台湾で戦争が起きたらどうなるのか?

編集部編

「三矢研究」とは
 今回から5回に分けて、台湾有事について考えてみたいと思います。

 さて「有事」とは何かというと、ずばり、戦争です。
 有事という言葉には自然災害なども含まれますが、基本的には戦争のことを指します。

 有事の反対を平時といいます。有事と平時とは、つまり戦争が起きている状況と、そうでない普段の状況を指しています。

 普通の国には有事法制という法律があります。戦争が起きた場合にはどうするのかという特別な法律のことです。

 「戦争が起きた。さあどうしよう。何も決めていなかった」というわけにはいきません。それでは戦争が起きた時に国や国民を守ることができないからです。
 ですから、戦争が起きた時のことは、戦争が起きていない時に考えないといけません。

 ところが日本では、「有事法制について研究することなど、とんでもない」「戦争が起きた場合のことを考えるなどとはけしからん」というような時代が長くありました。
 「戦争のことを言う者は戦争をしたがっているのだ。軍国主義を目指しているのだ」という、訳の分からない批判があったのです。

 例えば1963年のことです。「実際に朝鮮半島で戦争が起きて、それが日本にも波及したらどうなるのか」というシミュレーションを自衛隊が行ったことがありました。

 「北朝鮮が韓国にもう一度攻めてきて、西日本も北朝鮮の攻撃を受ける。その隙をついてソ連が北海道に侵攻してくる。北朝鮮はついに核兵器を使用する。ソ連も核兵器を使用する」というものです。
 シナリオ上では最終的にアメリカが勝つのですが、日本は壊滅的なダメージを受けるというものでした。

 この研究のことを、「三本の矢」の話に倣って、あるいは昭和38年になされた研究だったことから「三矢(みつや)研究」といいます。

 こうしたシミュレーションをしないと、仮に戦争が起きた場合に自衛隊はどうやって国や国民を守るのかが分からないわけです。

 どういう戦略を取るのか。どういう装備が必要なのか。どういう訓練をしておかないといけないのか…。そういった具体的なことが分からないといけません。ですから、シミュレーションをするのは当然です。そうしないと、国民を守れないからです。

 ところがです。
 「自衛隊がこんな研究をしている」ということになり、国会で大問題になりました。簡単に言うと、「戦争のことを考えるなんて、戦争をしたがっているのではないか」ということなのです。

時代は変わった?
 そのような国会でのやりとりがあったものですから、日本では長い間、有事法制については「考えてもいけないものだ。タブーである」という雰囲気がありました。
 自衛隊は存在してはいても、「実際に戦争が起きたら」とは考えてはいけないという不思議なことがあったわけです。

 しかし時代が変わってきて、北朝鮮が核を開発している、ミサイルを持っているということが分かり、これは戦争が起きたときのことを考えなければまずいという雰囲気ができてきました。

 そして三矢研究から40年たった2003年にようやく有事法制が制定されました。

 決して戦争を望むわけではありませんが、台湾有事はあり得ない話ではないのです。

 次回以降も、台湾有事は本当に起きるのか、仮に起きたらどうなるのか、日本には何が必要なのかということについて考えます。

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