世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

異例ずくめ、薄氷踏む米韓首脳会談

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、825日から31日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 米韓首脳会談の開催(825日)。中国恒大、香港取引所で上場廃止に(25日)。トランプ氏、シカゴに州兵派遣を示唆(25日)。米、インドに対する25%の追加関税を発動(27日)。中露潜水艦、初の合同哨戒(27日)。韓国、韓悳洙(ハン・ドクス)前首相を在宅起訴(29日)。上海協力機構の首脳会議、天津市で開幕(31日)、などです。

 8月25日(現地時間)、米韓首脳会談がホワイトハウスで行われました。
 その中で、李在明(イ・ジェミョン)大統領の発言の異様さが際立ち、結果として「空虚な」会談という印象を残すことになりました。

 会談冒頭、李氏は「朝鮮半島の平和」に向けて北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記との対話をトランプ氏に要請。トランプ氏は「年内にも会いたい」と意欲を見せました。

 さらに李氏はトランプ氏に対して、「大統領がピースメーカーの役割を果たすなら、私はペースメーカーとして一生懸命支援する」、米朝対話の再開に伴走すると語ったのです。
 「北朝鮮にトランプタワーを建設し、ゴルフをしてほしい。彼はあなたを待っている」とも語り、一貫してトランプ氏を持ち上げ続けました。

 続いてトランプ氏は、安倍晋三元首相の努力と成果を語りながら、日韓の歴史問題を巡って韓国側が慰安婦問題に「固執していた」と語り、自身の1次政権を振り返りながら、「日韓を協力させることに少し苦労した」と述べました。
 それに対して李氏は、823日に行われた石破首相との会談を通じて「多くの障害が取り除かれた」と述べ、懸案は解消したかのような発言をしているのです。

 さらにトランプ氏は、在韓米軍の駐留経費について韓国側の負担額に不満をにじませながら、「在韓米軍基地の土地の所有権」を求める踏み込んだ考えを明らかにしました。李氏は戸惑いを見せただけでした。

 実はこの会談、直前まで実現が危ぶまれる状況に陥っていたのです。
 中央日報によれば、トランプ関税を引き下げる見返りに韓国が3500億ドル(約51兆円)を投資するとした合意文書化を米側が求めて難航し、米側は一時、首脳会談中止の可能性までちらつかせるようになっていたのです。

 そして23日、トランプ氏が自身のSNSに「韓国で何が起こっているのか。粛清か革命のようだ」「(韓国では)ビジネスもできない」などと投稿しました。
 韓国では「特別検察官」チームが先月(7月半ば)、ソウル市内にある教会などを捜索しました。その一つが尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の妻、金建希(キム・ゴンヒ)氏の不正疑惑を巡る世界平和統一家庭連合への捜索です。

 さらに、非常戒厳宣言を巡る内乱事件を捜査する特別検察官チームは、米国と韓国空軍が共有するソウル南方の烏山空軍基地内のレーダー施設を捜索したのです。

 トランプ氏は25日、ホワイトハウスで記者団に、特別検察官の捜査を批判。「最近、韓国で教会に対する家宅捜索、新政権による非常に攻撃的な家宅捜索があったと聞いた」「われわれの軍事施設に入って情報を収集したと、聞いた」「事実かどうか分からない。確認する。新しい大統領がここに来る」「彼に会うことは期待しているが、われわれはそのようなことは容認できない」と強調したのです。
 まさに異例ずくめの薄氷を踏む会談となったのです。

 トランプ氏の質問に対して李在明氏は以下のように発言しています。

 「簡単に申し上げますと、韓国では今、親衛クーデターによる混乱が克服されて時間があまりたっていない状況だ」「内乱状況に対して国会が任命し主導する特検が事実を調査中だ」

 いくつもの「うそ」があります。
 特別検察官は国会が任命したのではなく、李在明氏が任命しています。国会が推薦して大統領が任命するのです。
 「検察は私の統制下にいない」。これも違います。検察は裁判所と違って法務部の管轄です。法務部は大統領が法務長官を任命しています。人事権は全て法務長官が握っていますから、大統領の統制下にあるのです。

 「特別検事が事実を確認するため、ファクトチェックをしているところだ」
 「米軍施設に入ったのは、米軍とは関係のない韓国軍の統制システムがどのように作動したかを確認するためだった」

 これらにも「うそ」が入り込んでいます。
 検察は、どの国の検察でも捜査権と起訴権を持った強力な存在であり、調査官ではありません。
 さらに烏山空軍施設において米軍と関係のない韓国軍の統制システムなどありません。連携しているのです。

 トランプ氏、トランプ政権がこれらの話をうのみにするとは思えません。米韓関係は不透明さを増すことになりました。

 10月31日、111日の両日、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議が韓国・慶州で開催されます。トランプ氏は参加を表明しています。米朝会談の可能性なども探ることになるでしょう。

 中国、ロシア、北朝鮮の動きに注目していきましょう。



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