2025.09.09 17:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
天安門楼上に立つ中露朝の3首脳、余裕のトランプ大統領
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、9月1日から7日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
中国「抗日戦争勝利80周年記念行事」軍事パレード(9月3日)。トランプ氏、対日関税引き下げの大統領令に署名(4日)。米国防総省の名称を「戦争省」へ復活(4日)。日豪2+2(国防、外相)会談、防衛協力拡大の共同声明(5日)。米政府が現代自動車工場で475人拘束、不法就労の疑い(5日)。石破茂首相が退陣表明(7日)、などです。
中国が9月3日、「抗日戦争勝利80年」を記念する軍事パレードを行いました。
中国、北朝鮮、ロシアの現トップが同じ場所に集まったのです。6年ぶりの軍事パレードですが、3人がそろって軍事パレードを観閲するのは初めてのことでした。
パレードに登場した新兵器は「驚くべきもの、予想を超えるもの」でした。しかし半面、高揚感がなかったと台湾の関係者は分析しています。
それは軍内部で進む「粛清」の影響と、国力全体を支える成長する経済展望が提示できない不安や焦りが原因なのでしょう。
記念行事の正式名称は、「中国人民抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利80周年記念大会」です。
式典演説で習近平主席は、「中国共産党の呼びかけにより形成され抗日民族統一戦線の旗の下、近代以降で初めて外敵の侵入に完全な勝利を収めた」「中華民族の偉大な復興は止められない」と述べ、現代の中国国民は毛沢東をはじめとする中国の歴史上の重要人物の思想的派生と並んで、公式の共産主義思想であるマルクス・レーニン主義を堅持しなければならないと強調しました。
さらに、「人類は再び平和か戦争か、対話か対立か、ウィンウィンかゼロサムかの選択に直面している」として、中国は「いかなる強権にも屈しない」と述べ、全軍に対して「世界一流の軍隊の建設を加速させ、国家の主権と統一、領土の一体性を断固守らなければならない」と強調したのです。
9月3日午前8時55分、習氏が要人らを率いるように天安門の楼上に姿を現しました。広場に集まった観客からは万雷の拍手が沸き起こりました。
習氏は自身の左右にロシアのプーチン氏、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)氏を座らせて、軍事パレードを観閲しました。
「対米共闘を一つの軸」として参加国全体が習氏を中心に結集しているかのような演出なのですが、誇張された威勢との印象は拭えなかったのです。
産経新聞(8月31日付)は、ワシントンの大手研究機関のハドソン研究所が、「中国の第2次大戦での勝利のパレードは究極のフィクション」と題する報告書を公表したと報じました。
執筆者は同研究所中国部のマイルズ・ユー部長です。その内容は、9月3日に中国政府が催す日本への勝利を祝賀する式典を厳しく非難するものとなっており、中国共産党の軍隊が日本と戦って勝利した戦闘は皆無に近く、抗日戦勝利の主張は虚偽だというのです。これが真実です。
中露朝はいずれも国内では強権で統治し、対外的には力による一方的現状変更をいとわない国々です。
日本の周辺に位置し、核戦力を増強しています。3カ国の連携は東アジア全体の安全保障環境に影を落とす重大な懸念であり、平和破壊の戦争勢力なのです。
中露は日本海や東シナ海で爆撃機による共同飛行を繰り返し、朝露はウクライナ戦争へ北朝鮮軍を派兵し協力関係が強化しています。その両国を支えているのが中国です。地域に安定と平和をもたらす「同盟」誇示は筋が通りません。
中国軍の「内部問題」の影響は否定できませんでした。
軍事パレードの総指揮官は中部戦区の空軍司令官(中将)。総指揮は現地の戦区を統括するトップの司令官が務めてきた「慣例」が崩されました。
中国軍で再燃している大規模な汚職摘発が背景にあると見られます。
中央軍事委員会政治工作部主任の苗華氏の失脚が確定的であり、制服組トップの何衛東・同委副主席も失脚説が濃厚です。
余裕を見せたのはトランプ大統領でした。
北京で中露朝の首脳が集まることが、米国の対抗勢力になると懸念しているかと問われ、「全くない」と述べ、米国への挑戦だと受け止めるかと問われ、「いいえ」と答えています。
トランプ氏はSNSで、「(中国が)米国に対して悪だくみをしている」「ウラジーミル・プーチンと金正恩に心からの敬意をお伝えください」と投稿。
ウクライナ戦争終結に向けての米ロ首脳会談を経て、プーチン・ゼレンスキー会談への道が開かれつつあります。
さらにトランプ氏は、金正恩総書記との会談へと意欲を燃やしています。
習氏は孤立しつつあるのです。
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