2025.08.25 22:00
facts_3分で社会を読み解く 82
ニューヨークで行われた信教の自由に関する国際会議(2)
「反統一教会声明」の背景
ナビゲーター:魚谷 俊輔
去る8月1日から3日にかけて、米国・ニューヨーク市内の会場で、「現代における宗教の自由への脅威の根本原因の評価」をテーマに、第3回HJI平和と公共リーダーシップ会議が開催された(「HJI」とは、「HJ平和・公共リーダーシップ国際大学院」の略称で、かつての統一神学大学院)。
この会議の日本に関するセッションで筆者は、「日本における反統一教会運動」と題するプレゼンを行った。
その内容を今回から7回にわたって紹介したい。
日本における統一教会反対運動は、大きく分けて三つの勢力からなっている。キリスト教牧師、反対父母の会、左翼勢力である。
これらはもともとお互いに接点がなく、それぞれバラバラに統一教会に反対してきたが、1980年代初頭より「統一教会潰し」という目的のもとに結束し、今やスクラムを組み反対運動を展開している。
この三つの勢力についてこれから詳しく説明したい。
第1の勢力は、キリスト教の牧師たちである。
彼らの反対の動機は、異端との闘争にある。彼らの視点からは統一教会は異端の信仰であるため、その信仰を棄(す)てさせなければ救われないと考えている。
日本において拉致監禁を伴う強制改宗を最初に行ったのは、日本イエス・キリスト教団荻窪栄光教会の森山諭牧師で、1966年早春のことだった。
森山牧師は著書の中で、統一教会に反対する動機を、次のように告白している。
「彼らがキリスト教を名乗らなければ、問題にする必要もありません。しかし、彼らがキリスト教を名乗り、文鮮明を再臨のキリストに担ぎあげ、聖書をでたらめに解釈して人々を惑わすので、放っておけないのです。」(『現代日本におけるキリスト教の異端』森山諭 ニューライフ出版社 1981年、132ページ)
森山牧師は1976年に八王子の大学セミナーハウスで「異端問題対策セミナー」を開催し、それまでの10年間の経験を元に、身体隔離を手段とした脱会説得法を他の福音派の牧師たちに伝授した。
その後、強制改宗事件が増加するようになる。
森山牧師とその薫陶を受けた牧師たちは、聖書を文字どおりに解釈する「福音派」のグループだったが、統一教会に反対する牧師たちは必ずしも福音派というわけではなく、自由主義神学を信奉する日本基督教団の牧師たちもいる。
その中にはキリスト者でありながら左翼的な思想を持つ人物もおり、一口に「反対牧師」といっても、その思想的傾向は必ずしも同じではない。
日本基督教団はさまざまな教派が集まって成り立っている教団であり、世界でも数少ない合同教会の一つである。
この日本基督教団に左翼思想を持つ人々が入り込むようになり、1980年代には教団執行部を乗っ取るようになった。
これらの左翼思想を持つ人物たちは、毛沢東の「造反有理」の言葉にちなんで「造反派」と呼ばれる。
その造反派の人物によって、1988年3月、反統一教会声明が出されたのである。