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安倍政権の功績⑥
デフレ脱却を成し遂げたアベノミクス

編集部編

 7月8日、安倍晋三元首相の命日(没年67歳)を迎えました。
 安倍元首相への追悼の思いを込めて、6回に分けて「安倍政権の功績」について考えてまいります。

「デフレ」とは?
 今回はアベノミクスの功績について、主にデフレ脱却の観点から説明したいと思います。

 安倍政権が始まるまでは、日本はかなり長いデフレ経済に苦しんでいました。
 「デフレ」というのは物価が下がり続けることをいいます。

 物価というのはモノの値段のことですから、物価が下がればモノを安く買えるようになります。そうすると、皆さんにとっては良いことのような気がするかもしれません。
 ですが、日本の経済全体にとっては、物価の下落が続くということは困ったことなのです。

 物価が下がり続ければ、今買わなくても後で買えばもっと安くなります。
 ですから、どうしても今買わなければならない物以外は、人はできるだけ後で買おうとするのです。

 そうすると、モノが売れなくなってきます。企業はモノの生産を抑えるようになります。モノの値段を下げたりもします。
 こうして利益が減っていくので、リストラが始まったり、工場が閉鎖されたりして失業者が増えていくわけです。労働者の賃金も下がっていきます。

 この結果、さらにモノが売れなくなります。失業者が増えたり、労働者の賃金が下がったりするので、モノを買おうとしなくなるわけです。
 こうして物価が下がり続けることによって、景気がどんどん悪くなっていきます。

 この悪循環のことを「デフレスパイラル」といいます。いったんこのデフレスパイラルにはまってしまうと、これを抜け出すのはかなり難しいことなのです。

 日本はバブルが崩壊した後、このデフレが20年間続きました。こんな国は世界のどこにもありません。
 これ以上デフレが続けば、日本は本当につぶれてしまうのではないかというような状況でした。

 こういう状況で、共産党が言うように賃金を上げるのは間違いです。モノが売れないのに賃金だけ上げてしまえば企業がつぶれてしまいます。結局は失業者が増えることになります。
 ですから国民を豊かにするためには、まずは企業の活動を上向かせなければならないのです。

 共産党は「大企業優先は駄目だ。労働者を優先せよ」と言ったりするのですが、そんなことで経済は絶対に良くならないのです。マスコミもこれと似たようなことをよく言います。

「借金」とは?
 少し話は変わりますが、国が借金をすることは別に悪いことではありません。もっと言うと、国だけでなく個人が借金をすることも悪いことではないのです。

 ここで簡単な算数をしてほしいのですが、例えば、100万円の収入がある人が90万円を使い、10万円を貯金しました。そうすると世の中の経済活動は、足し算をして引き算をすると、10万円分減ることになります。

 逆に、100万円の収入があるその人が110万円を使いました。つまり、10万円の借金をしたわけです。そうすると、世の中の経済活動は10万円分増えることになります。

 お分かりでしょうか。
 国の経済が成長するということは、誰かが借金をしているということなのです。誰も借金しなければプラスマイナスゼロで現状のままでしかありません。つまり、借金は悪いことではないのです。

 よく勘違いされることなのですが、「借金」と「浪費」は違うことです。浪費は確かに良くないことですが、借金は国を豊かにすることなのです。そして結局は、国民一人一人を豊かにしていくことになるのです。

 日本が高度経済成長を果たしていた頃、国民の多くが借金をしていました。ローンを組んで家を買ったり車を買ったりしたのです。
 それでも景気が良かったので、国民に不安はありませんでした。それで日本は借金をしながらどんどん経済が成長していったのです。

「アベノミクス」とは何だったのか
 実は、経済にとって重要なのは、「これから景気は良くなる」「借金をしても大丈夫なのだ」「もっともうかるから大丈夫だ」という希望なのです。
 希望があると国民はモノを買いますし、企業も投資をするようになるからです。

 ところが希望が高まり過ぎると、経済成長が過熱するようになります。そうすると、いつかバブルが崩壊してしまいます。
 日本もバブルが崩壊しました。その後日本は緊縮財政といって、「借金を減らすのだ」「支出を抑えるのだ」ということに取り組んできたわけです。

 しかしこのことは、経済学的には問題がありました。
 支出を抑えるということは、企業や市場が希望を持たなくなるということです。生産活動を抑えることになります。

 逆に、「支出が拡大する」「これからモノが売れる」と思えば、企業は投資を始めるのです。
 こうして良い景気が循環すると、国が何もしなくても勝手に経済は発展します。これが最終的な目標なのです。

 ですが、そういう状況になるまでは国が経済を動かさないといけません。まずは金利を下げてお金を借りやすくします。これが「大胆な金融政策」です。
 次に、公共事業を行って仕事を増やします。これが「機動的な財政出動」です。
 そして規制を緩和して仕事をしやすくします。

 こうやって、国が手伝わなくても経済が成長できるようになるまで国がバックアップする、簡単に言うと、これが「アベノミクス」でした。

 アベノミクスによって日本の経済指標は大幅に改善しました。
 就職率は過去最高水準です。倒産も減りました。有効求人倍率も増えました。そして何より、国の税収が増えたのです。

 もちろん、「経済成長した」「豊かになった」と実感を持てない人も中にはいるでしょう。しかし日本全体としては、まずはデフレを脱却したという事実がとても大きかったのです。
 この意味で、安倍政権の功績は、実に大きかったといえるでしょう。

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