2025.07.31 12:00
ほぼ5分で読める勝共理論 88
安倍政権の功績⑤
人気よりも国民の安全を考えた安倍政権
編集部編
7月8日、安倍晋三元首相の命日(没年67歳)を迎えました。
安倍元首相への追悼の思いを込めて、6回に分けて「安倍政権の功績」について考えてまいります。
憲法9条の解釈
日本は「自衛権を行使できる」と解釈しました。
憲法9条には、日本は戦争ができないとしか書いていません。しかし「実は自衛権は行使できるのだ。それは、憲法9条が言うところの戦争には当てはまらないのだ」と決めたのです。
かなり強引で無理やりな話なのですが、そう考えるしかなかったわけです。
本当は憲法を変えて、現状に合わせるのが一番分かりやすく簡単でよいのですが、そのようにはできませんでした。
ただ、ここで次のような問題が出てきました。
憲法9条には戦争ができないとしか書いてないので、「個別的自衛権はやむを得ないが、集団的自衛権は駄目だ」と政府が解釈したのです。
本当は個別的であれ集団的であれ、自衛権は自衛権なので別に違いはありません。しかし憲法9条に合わせるために、やむを得ずそう決めたということなのです。
ただ、これも無理な話ではあります。
例えば、日本の安全は日米同盟によって守られています。日本が攻撃されればアメリカが守ってくれます。アメリカは世界最強の軍隊を持っていますから、それで日本は攻撃されないのです。日本はそうやってアメリカと一緒になって日本の安全を守っているのです。
しかし考えてみてください。
日米同盟は、実は集団的自衛権なのです。つまり日本は、集団的自衛権によって日本の安全を守っています。でも「日本は集団的自衛権を自分で行使するのは駄目だ」と政府が決めたのです。
このことによって、一番損をしているのはアメリカです。何しろアメリカは、命懸けで血を流して日本を守る義務があるのです。
その一方で日本は、アメリカを守る義務がないのです。なぜかというと、憲法9条に書いてあるのでそうできないのだと言っているわけです。
これは「片務条約」といって、アメリカからは「不公平ではないか」「日本はひどいではないか」とずっと言われてきました。
日米同盟の真実
さらにここから、もう少し複雑な話をしたいと思います。
個別的自衛権というのは、日本の領域の中で成立するものです。日本の領域から一歩外に出ると、日本では個別的自衛権とは見なしません。
日本の領域がどれぐらいの範囲にあるかというと、海岸線からわずか22kmの範囲です。その外側は公の海、「公海」といって日本の海ではありません。
つまり、たとえ日本を守るための行動であっても、この22kmの範囲を一歩超えると、そこからは個別的自衛権ではなくなってしまいます。つまり公海でアメリカと協力することは集団的自衛権になってしまうのです。
図をご覧ください。
この図で言うと、黄色い部分で自衛権を行使すると、個別的自衛権です。しかしここからはみ出ると集団的自衛権になるので、アメリカと協力すると憲法違反になるということなのです。
ややこしい話なのですが、お分りいただけるでしょうか。
しかし考えていただきたいのです。今どきの戦争で、図中の黄色の部分の範囲内に閉じこもっていて、敵の攻撃から自国を守れるはずがないのです。
ミサイルは飛んできますし、戦闘機もあっという間に到着してしまうでしょう。70年以上も前の戦争だったらそれも可能だったでしょうが、今どきの最先端科学技術がふんだんに盛り込まれた戦争で、そんなことができるはずがありません。
ですから結局は敵の攻撃から日本を守るためには、図中の黄色い範囲の中だけではなくて、その外に行って日本の国を守らないといけないのです。しかしそこでアメリカと協力すると憲法違反になってしまいます。
「アメリカ軍の皆さん、皆さんは自分で自分を守ってください。私たちは助けません。攻撃されても見捨てます。この黄色い範囲(領海)の中では助けますけれども、そこより先では日本はアメリカを守りませんよ」という約束で日米同盟をやってきたわけです。
これはアメリカにとっては大変な不満でした。
安倍総理の判断
安倍総理(当時)はこの点を大きく問題視しました。
このままではアメリカは日本を信頼できません。いざ戦争になったときに、本当に日本を守ってくれるのか、その保証がないのです。
それで安倍総理は平和安全法制を制定して、日本を守る場合であればこの黄色い部分を超えても日本はアメリカ軍を守れるようにしようと決めたのです。
これが平和安全法制の集団的自衛権の限定的行使容認の意味なのです。
もちろんこの法律を作ったからといって、誰かがもうかるわけではありません。支持率も上がりません。
むしろマスコミや野党がさんざん反対したので、支持率は下がりました。ですからこんな法律は誰も作ろうと思わないのです。必要だとは思っても、実際に作れる勇気のある人はほとんどいないのです。
安倍総理はマスコミが反対し、野党もプラカードを持って反対する中で、この法律を作りました。その結果、日本とアメリカの信頼関係は格段に強化されました。
「何かあれば日本はきちんとアメリカ軍を守ってくれる。安倍総理はその責任を果たしてくれた。安倍総理はアメリカを守る覚悟がある」
こうして今日の日米関係の信頼は築かれたのです。もちろんこの信頼関係はアメリカ以外の多くの国とも築かれていきました。
安倍総理はこの法律ができた時、「これで向こう10年間は、中国は日本を攻めることはできなくなった」と言いました。
安倍総理は国民からの人気が下がる、支持率が下がる、マスコミから責められるといったことよりも、本当に日本人の安全を確保するためにはどうしたらよいかを考えたのです。
安倍政権でなければ、こうした判断はできなかったのではないでしょうか。
改めてこの点について、安倍政権の安全保障政策を高く評価したいと思います。
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◆『よくわかる勝共理論~日本と世界の平和のために~』(光言社)