スマホで立ち読み Vol.38
『“人さらい”からの脱出』17

小出浩久・著

(光言社・刊『“人さらい”からの脱出 違法監禁に二年間耐え抜いた医師の証言』〈2023年11月20日改訂版第2刷発行〉より)

 スマホで立ち読み第38弾、『“人さらい”からの脱出』を毎週水曜日(予定)にお届けします。
 2年間にわたる拉致監禁後、「反統一教会グループ」の一員として活動した経験のある筆者。そんな筆者が明らかにする、「脱会説得」の恐ろしい真実とは。

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1 15カ月間の監禁生活

四、新潟での説得、逃げ回る生活の始まり②

 次に話題となったのは、教理に関してであった。

 彼らは「教会にいるときは『アベルの言うことは絶対だ』と教えられ、命じられるままにそれを信じて頑張ってきた。アベル・カインとは指示・命令の関係で、絶対服従をしなければならないことなんだ」と、口々に言ってきた。

 私は「『原理講論』のどこにもそんなことは書かれていない。アベルとカインは兄弟で、愛によって一つになる関係を築くように努力して、初めて救いの道が開かれると教えているではないか」と、説明した。

 ところが彼らは「私たちは皆、アベルからそう教わった。あなたの原理理解は独自的でマチガイだ」と、逆に“説教”されてしまった。

 確かに、私も教会の先輩から「アベルの言うことは絶対である。カラスが白いと言われれば、自分は黒と思っても白と思いなさい」と言われたことはある。しかし、これは罪を犯した人間がその罪を取り除くという条件を立てるためには、従順という姿勢が重要であることを強調するための教訓的な指導であった。私はそれを生活の中で実行を迫られたり、強制されたことはない。カインの立場にある人が、アベルの立場の人に心を開いて、その人を通して神からの愛を感じ、心の状態を把握してもらい、アベルと交流し、活動する喜びを周りの人々にもひろげてゆくのが、とても大事だと感じていた。

 私が理解した範囲ではあろうとも「アベル・カイン」の教理とすばらしさを説明したかった。けれども、そこまで突っ込んだ話はできなかった。彼らは私を“敵”のように責め立て、私も彼らと本当の意味で心を開いて話すことができないままに、対話は平行線になったからである。

(続く)

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 次回は、「逃げ回る生活の始まり③」をお届けします。



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