2025.07.30 22:00
スマホで立ち読み Vol.38
『“人さらい”からの脱出』16
小出浩久・著
スマホで立ち読み第38弾、『“人さらい”からの脱出』を毎週水曜日(予定)にお届けします。
2年間にわたる拉致監禁後、「反統一教会グループ」の一員として活動した経験のある筆者。そんな筆者が明らかにする、「脱会説得」の恐ろしい真実とは。
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第1章 15カ月間の監禁生活
四、新潟での説得、逃げ回る生活の始まり①
万代のマンションに移された翌日、新津福音キリスト教会の牧師を名乗る松永堡智(やすとも)氏が4、5人の元統一教会員と共に訪ねてきた。
松永牧師は部屋に入るなり、あいさつもそこそこに、「文鮮明(ムン・ソンミョン)が語ったことには矛盾がある」と切り出し、いくつか問題だという箇所を指摘してきた。
例えば、21日修練会の資料の中から、文師のみ言(ことば)に対して難癖をつけてきた。「興南(フンナム)での労働量に関する話は、まったくつじつまが合わない」と言うのだ。
松永牧師は1日の労働時間と1時間の労働量を計算して、「文鮮明が言っている結論のようになるかい。ならないだろう。デタラメじゃないか。文鮮明はウソばかり言っている。こんな人間がキリストだと思うのか」と私に詰問した。
そして、聖書からペテロの第一の手紙2章22、23節を読んで帰って行った。そこには「キリストは罪を犯さず、その口には偽りがなかった。ののしられても、ののしりかえさず、苦しめられても、おびやかすことをせず、正しいさばきをするかたに、いっさいをゆだねておられた」と書かれていた。
奇しくもこの23節をマンションで聞かされたことは、その後において、統一教会に関するさまざまな誹謗(ひぼう)・中傷とも言える悪口に対して、私の取るべき姿勢を教えてくれたのであった。
万代のマンションには、連日元信者が訪ねてきた。ここで彼らは、いわゆる“霊感商法”について、「統一教会が組織ぐるみでやっている」という彼らの主張を私に認めさせようと、徹底的に攻めたててきた。
「統一教会の指示・命令で、信者が霊感商法を組織的にやっているんじゃないか」と、訪ねてくる元信者の誰もが同じように繰り返した。「私はアベル(教会組織の中で自分を信仰面で育ててくれる方)に言われるままに壷(つぼ)や多宝塔、珍味を売っていた」と皆が皆言ってきた。
元信者たちの繰り返しに対して、私は「霊感商法を統一教会が行っていると言うけど、本当に教会が組織をあげてやっていると思っているんですか」と、逆に質問した。彼らは「当然じゃないか」と言ってきた。
そして私は「それじゃあ、あなたは統一教会の職員から指示されていたのですか。あなた方の販売はどこでやっていたんですか。会社じゃないんですか」「霊感商法は詐欺だというならば、あなた方もそれをやっていたときには、相手を本当に騙(だま)すつもりでやっていたんですか。それだったら、それはあなた方に責任があるんじゃないですか」と、逆に問いただした。
彼らは「確かに販売は販社や会社で行っていた。しかし、その販社や会社は教会のものじゃないか」「ブロックという教会の組織で霊感商法はやっていたんだ」「自分たちは教会に騙されて、マインド・コントロールされて霊感商法をやっていたので責任はない」などと反論してくる。
私は、マスコミのいう“霊感商法”とは「宗教法人の教会がやっていたのではなく、熱心な信者の一部が個人として自主的にやっていたことだ。そうした信者がつくった会社や組織で行ってきたことじゃないですか。もともと統一教会に会社などないですよ。あなた方の認識はおかしい、間違っている」とそのつど説明した。
元信者たちは、「あなたのほうこそおかしい。ウソを言っているのだ」と、食ってかかってきた。
「私の言っていることはウソでも何でもない。霊感商法と言われていることは現実がそうだったんですよ。あなた方は自分の立場を混同していたんです。牧師や反統一教会の人の言うことを鵜呑(うの)みにするんではなくて、自分でよく考え、現実を確認してみてください」と反論を繰り返した。
(続く)
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次回は、「潟での説得、逃げ回る生活の始まり②」をお届けします。