青少年事情と教育を考える 298
日本の高校生、「社会に出たら理科は必要ない」

ナビゲーター:中田 孝誠

 「社会に出たら理科は必要ない」という高校生がほぼ半数―。
 最近公表された「高校生の科学への意識と学習に関する調査―日本・米国・中国・韓国の比較」(国立青少年教育振興機構)で、このような結果が明らかになりました。対象は4カ国で約16000人、このうち日本は5000人です。

 この中で、将来役立つと思う科目として、「数学」と答えた日本の生徒は39.9%で、米国や中国より20ポイント以上低く、「物理」は14.0%で4カ国の中で最低でした。
 逆に、「社会に出たら理科は必要なくなる」と回答したのは45.9%と半数近くで、4カ国中最高でした。

 日本の生徒たちも理科に興味関心がないわけではありません。
 例えば、動植物や天文に関することに「興味がある」という生徒は6割以上です。
 ただ、「星や岩、花や野鳥など、自然を観察したり、調べたりする」といった体験は、他国が56割に対して、日本は3割台でした。「自然の中で生き物や植物を採って食べたり、加工したりする」といった割合も4カ国の中で最低でした。

 また、「学んだ科学の知識を日常生活の問題解決に活用する」「野外に出かけて、科学について学習する」「生き物の世話をする」という割合も最低でした。
 それと共に、「科学の技術や知識を学ぶことは難しい」という回答が多く、プログラミングや生成AIの利用など、デジタル技術の活用では最も低い水準にとどまっています。

 日本の高校生は、決して科学に弱いわけではありません。OECD(経済協力開発機構)が行うPISA15歳が対象)でも、日本の生徒の「科学的リテラシー」は国際的にトップレベルです。
 ただ、学んだ知識を生かして、自分で考えて問題を解決したり、活用したりする体験が少ないということでしょう。

 学校だけで難しければ、家庭や地域の科学館のような専門機関なども含めて、子供の体験の環境を増やすことも必要だと思われます。
 理科、科学という言葉に抱くイメージもあるでしょうが、自分で考えて実践することの大切さを改めて明らかにした今回の調査だったと思います。