2025.07.15 17:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
中露トップ「不在」のBRICS首脳会議が開かれる
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、7月7日から13日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
BRICS首脳会議を中露トップ「不在」で開催し、首脳宣言採択(7月6~7日)。米政権、日本に相互関税25%を書簡で通達(7日)。トランプ氏、銅に関税50%課すと発言(8日)。トランプ氏、ロシアに追加制裁を課す考えを表明(8日)。中国軍機が2日間にわたり異常接近、防衛省が公表(10日)。韓国・尹前大統領、再び逮捕(10日)、などです。
7月6日、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国の頭文字から)首脳会議がブラジル・リオデジャネイロで開幕し、首脳宣言を採択しました。
今年1月に加盟したインドネシアを含む10カ国体制での初の首脳会議となりましたが、拡大を進めた当の中国やロシアのトップが対面出席を見送るという異例の会議となりました。
準加盟国と位置付けられた「パートナー国」や招待国を含む28カ国の代表が参加する重要な会議であったはずでした。
中国は、李強首相が習近平国家主席の代役を務めました。習氏の当会議欠席は、2013年党総書記就任以来初めてです。よほどの事情があったといわなければならないでしょう。
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵略を巡り国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ていることからオンライン参加となり、エジプト、イランの両大統領は中東情勢の緊張を理由に欠席しました。
このような事情から、採択されたBRICS首脳宣言は米国の名指しを避けるものとなっており、「無差別な関税引き上げ」などについて、「世界貿易のさらなる減少やサプライチェーン(供給網)の混乱、不確実性の拡大をもたらす」と強調するにとどまったのです。
BRICSはこれまで、加盟国の自国通貨による貿易取引の決済システムの構築を目指してきたのですが、宣言では「議論を継続する」と触れるにとどまりました。
トランプ大統領がBRICSに対して、ドル依存から脱却する動きに出れば「100%の関税を課す」と繰り返し威嚇していたことが背景にあるのです。
さらにトランプ氏は7月6日、自身のSNSへの投稿で「BRICS諸国の反米政策に同調する国に対しては、10%の追加関税が課せられる。この政策に例外はない」と改めて警告していました。
もともと中露はBRICSを「米欧の対抗軸」にしようと加盟国の拡大を推進していたのですが、ブラジルやインドはこの方針に反対の立場だったことも影響しています。
世界は今、習近平主席(72歳)の動静に注目しています。BRICS首脳会議欠席を含め、公式活動が減っているのです。
その理由については、さまざまな憶測が飛び交っています。理由の一つとして、習氏の体調不良が挙げられます。中国政府関係者は開催地がブラジルだったこともあり、「医師団が長距離の移動を伴う活動を止めている」との見方を示したのです。
別の理由も挙げられています。
7月7日は日中戦争の発端となった盧溝橋事件の記念日に当たるため、「抗日イベントを重視したのでは」というものです。
実際習氏は、この日、山西省の抗日戦争関連施設を訪問していますが、これは地方視察を兼ねたもので、「BRICSを欠席してまで優先しなければならない活動とは思えない」(日中関係筋)との指摘もあります。
さらに習氏の権力掌握状況が不安定になっているとの声もあります。
ほぼ毎月あった習氏の地方視察や共産指導部が一堂に会する党政治局会議が滞っており、このたびの山西省訪問は48日ぶりの地方視察であり、6月の政治局会議(毎月開催が基本)は66日ぶりの開催だったのです。
習氏の権限が弱体化しつつあるのではないか。習氏に近い党幹部が失脚する事例が目立ち、対応に追われているとの見方もあり、国外に出ることに対する不安があるのではとの見解もあります。
いずれにせよ、普通ではない状況にあるのです。
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