青少年事情と教育を考える 42
LGBT差別禁止法案

ナビゲーター:中田 孝誠

 先月(2018年11月)、立憲民主党が「LGBT差別禁止法」の法案をまとめたと発表しました。詳細は分かりませんが、性的少数者の人たちに対して企業や行政機関が差別的な扱いをすることを禁じるというものです。

 かつて旧民主党・民進党が同様の法律の制定を目指していました。立憲民主党に旧民主党・民進党の議員が多く所属していることを考えると、今回の法案も同党が検討していた法案に近いと考えられます。

 性的少数者に対する配慮は大切なことです。ただ、こうした差別禁止法が適切な施策かどうかは、全く別の問題です。

 旧民主党・民進党が検討していた法案は、政府や地方自治体が性自認や性的指向を理由にした差別を解消するための基本方針や計画を定め、行政機関や事業者に差別解消のための義務を課していました。

 しかし、こうした法律が制定されると、かえって差別を助長するのではないかと批判する声があります。普通に暮らしたいと思っている当事者まで巻き込むという意見もあります。

 実際、次のような問題が起きているということです。
 ネットニュース編集者の中川淳一郎氏によると、今夏に杉田水脈衆議院議員の「新潮45」の発言に関して批判が起こりましたが、逆に当事者からは杉田氏の意見に理解を示す声や、活動家らがむしろ差別を助長するといった批判が起こりました。すると杉田氏を批判した人々は、そうした当事者に対して「ネトウヨホモ」「ホモウヨ」といった蔑称を浴びせて糾弾したというのです(NEWSポストセブン、9月3日配信)。

 差別と言っても、例えば、「ホモ」などとからかわれるようなことは無くさなければなりません。しかし、社会的慣習として行われていること(「学校の制服や体操服を戸籍上の性別で分ける」「一部の授業や学校行事などを男女で分ける」など)についてまで全て差別として解消すると、社会全体を大きく変えてしまったり、場合によっては崩壊を招くことにもなります。

 また、差別禁止法や全国に広がっている同性パートナーシップの背景には、性的少数者のことが政治的に利用されているという実態が見えます。同性パートナーシップを推進する人々の発言からも、同性婚推進のための運動であることがうかがえます。立憲民主党も、差別禁止にとどまらず、同性婚を可能にする法整備を検討しています。

 一部のマスメディアは、自民党の姿勢を批判し、自民党が検討していたLGBT理解促進法が一向に進まないことに対して、性的少数者に冷たい党であるかのような記事を発信しています。
 しかし当事者の中には、こうした政治的な動きを嫌っている人が少なくありません。

 繰り返しますが、性的少数者の人権を守る配慮は必要でも、差別禁止法を制定することがそれにかなうのかは別の問題です。こうした意味で、立憲民主党が提出しようとする法案、また今後の自民党の動向に関心を向けておく必要があります。